ファミマがドンキとの提携を選んだ「のっぴきならない事情」

コンビニ業界大変動の号砲か
加谷 珪一 プロフィール

ファミマがコンビニを変える

今回の提携がどう開花するのかはまだ分からないが、場合によっては、コンビニという業態を大きく変えるきっかけになるのではないかと筆者は考えている。

店舗数でセブンに肉薄しながら、収益力で大きく劣るファミリーマートの舵取りはそう容易ではない。だが、そうであるが故に、ファミリーマートには大きなチャンスがある。セブンは圧倒的な勝利者なので、既存の戦略を変えることは簡単ではないが、ファミリーマートなら、逆に思い切った手を打つことができる。

実際、ファミリーマートはそうしたスタンスに舵を切りつつあるように見える。それを象徴する出来事のひとつが、今回のドンキとの提携だが、同社はこれ以外にも積極的に外部との提携を進めている。

そのひとつがLINEである。

 

同社は6月15日に、LINEと業務提携に関する基本合意を締結しており、LINEが開発するクラウド・ベースのAIサービスとファミリーマートの店舗網を連携させる計画を打ち出した。

具体的な内容は明かされていないが、ファミリーマートにおける購買データをAIが分析し、LINEのメッセージング機能を使って最適なクーポンを送付するなど、個人ごとにカスタマイズされた販促活動の展開が予想される。

この提携は、実は小売業のあり方を根本的に変革する可能性を秘めている。

これまで小売業というのは、商品を陳列し、不特定多数の人が来店するのを待つという受け身のビジネスであった。だが、LINEの利用者向けのサービスということになると、店側は事前に顧客がどのような人なのか理解した上で、販促を行うことになる。

この考え方をもう一歩進めれば、米アマゾンが米国で展開しようとしている、人工知能を使った無人コンビニと同じ考え方に行き着く。

無人コンビニは、アマゾンの会員が来店することが大前提なので、それほど目立つ場所でなくても、店舗を構えることができる。また来店者の嗜好に合わせて店ごとに微妙に商品構成を変えるといったきめ細かい対応を行うことで、客単価の大幅なアップが見込める。

もしファミリーマートがこうした展開を視野に入れているのであれば、従来のコンビニ業界の秩序は大きく変わることになるだろう。その時には、ドンキとの提携が思わぬ効果を発揮しているかもしれない。