若者の死因「自殺」最多が意味すること〜メンタルヘルスの大原則とは

日本社会にも漂う漠然とした不安
高橋 祥友 プロフィール

TALKの原則

さて、自殺の危険が高いと感じる人を前にしたら、どのように対応すべきだろうか?

カナダの自殺予防のグループがこれをTALKの原則としてまとめている。これはTell, Ask, Listen, Keep safeの頭字語である。

T:言葉に出して、相手のことを心配していることを伝える。
                                      A:自殺について率直に尋ねる。真剣に聴く姿勢があるならば、自殺を話題にしても、背中を押すことにはならない。これが自殺の危険を予測する第一歩となる。
                                      L:徹底的に相手の言葉に耳を傾ける。傾聴である。相手は自分の問題に対する解決策は自殺しかないと思いこんでいる。その話を聞いているのが健康な人であるならば、解決策を10や20ただちに思いつくだろう。しかし、あまりにも性急に解決策を示そうとすると、「この人も私の悩みを聴いてくれない」というメッセージになってしまい、開きかけていた心の窓を閉ざして、自殺が実行されるきっかけになるかもしれない。
                                      K:危険と判断したら、独りにさせない。一緒にいてあげながら、必要な援助を求める。強い自殺願望があったり、つい最近、自殺未遂を認めたりしたような場合には、確実に専門の精神科治療に導入するようにしてほしい。

 

社会に漂う漠然とした不安

自殺を予防するには、それに先行する抑うつに敏感に気づくことが重要である。

抑うつに陥ると、自己評価が極端に下がり、「自分には何の価値もない」「生きるに値しない」といった否定的な思考に囚われ切ってしまい、攻撃性が自己に向けられる可能性も高まる。

重症になると正常な判断力が弱まり、自力で適切な対処をすることが難しくなる。このような場合には、周囲の人々が抑うつに気づいて、適切な対処を取る必要がある。

最後に、あるエピソードを紹介しておこう。

自殺率の上昇は東アジア共通の問題であり、数年前に、台湾、韓国、日本の専門家が台北に集まり、意見交換をする機会があった。韓国の自殺率は近年、日本を上回っている。韓国の精神科医が自殺率上昇の社会経済的背景について発表した。

そのうえで、次のような点を指摘した。

「韓国はある程度の民主化も経済発展も達成した。しかし、この国が将来どのような方向に進んでいくのか見失っているのが現状である。この漠然とした不安は社会経済指標ではとらえられないが、自殺率上昇の背景に存在する最大の要因と考えられる」というのだ。

この発表を聴いていて、私はこれは韓国だけではなく、まさに日本にも当てはまる問題ではないだろうかと感じたのだが、これをまとめの言葉としておこう。