若者の死因「自殺」最多が意味すること〜メンタルヘルスの大原則とは

日本社会にも漂う漠然とした不安
高橋 祥友 プロフィール

具体的にどうすればよいのか

最近では、子どもの自殺が起きると「いじめ」、大人の自殺では「職場の問題」ばかりに焦点が当てられる傾向がある。

たしかに、対人関係のトラブルや周囲の人の不適切な対応が自殺の遠因になっている場合もある。しかし、一つひとつのストレス因は実際にそれが起きている時点では、よもや自殺の原因になるとはなかなか認識されにくいというのが実際である。

しかし、共通している点は、自殺が生じる前には、明らかな「抑うつ」がほとんどの場合出現してくるということである。その抑うつの症状を適切にとらえて、それに適切に対処するというのが、予防につながる。

抑うつの三大症状としては、気分や感情、思考や意欲、身体に現れる症状がある。

気分や感情の症状:気分が沈む、涙もろくなる、不安で仕方がない、落ち着きがなくなる、悪いことが起きるとすべて自分の責任であると考える、自分などいないほうがよいと思う、死にたくなるといった症状である。

思考や意欲の症状:仕事の能率が落ちる、注意が集中できない、ごく日常的な事柄についても決断力が鈍る、これまでは好きだったことに対しても興味がわかないなどの症状である。

身体の症状:全身のどの部分に症状が出てきても不思議ではない。しかし、その中でもほぼ必発であるのは、倦怠感、不眠、食欲不振、体重減少などである。

ところが、これが抑うつ状態で現れる身体の症状とは気づかず、身体の病気になったのではないかと思いこむ人も少なくない。実際に身体の病気が隠れていては困るので、ぜひ検査を受けてほしい。

しかし、検査を受けても異常が見当たらないのに、不調が続く場合には、「抑うつ」の可能性を考えて、専門医のもとに受診してほしい。

 

抑うつに傾きやすい性格傾向

抑うつに傾きやすい性格傾向として従来からよく指摘されているのは、生真面目、几帳面、仕事熱心といった性格だろう。

たしかにこのような傾向は一般的であるのだが、もう一歩踏みこむと、自己不全感、完全癖、対他過敏性といった特徴も現れてくる。

自己不全感:周囲の人々からは優秀で、仕事のできる人だと評価されているものの、本人は自己の能力に自信がなく、いつかは無能な点があばかれてしまうのではないかといった不安が強い。

完全癖:自己の能力に対する不全感があるため、それをカバーしようとして徹底的に仕事に打ちこもうとする傾向がある。しかし、「完全に」という目標自体が、達成不能な目標となる。

対他過敏性:「これだけ努力したのだから、満足だ」と自己の達成したことを認められずに、評価の尺度はつねに外部の世界にある。要するに、「自分の仕事が他者からどのように評価されているのか」という点ばかりに関心が向いている。

抑うつに傾きやすい性格傾向としてはこのような点が典型的に認められる。

なお、抑うつに対する心理療法として近年高く評価されている認知療法では、抑うつに傾きやすい人の世界観を次のようにとらえている。

このような人は自分の過去は失敗だらけだったととらえている。そして、現在の自分も大したことはできていないと認識している。このように過去も現在も否定的にとらえているために、それを基に未来を予測すると、肯定的な予測がまったくできない。

このような過去、現在、未来をすべて否定的にとらえる世界観こそが、抑うつに傾きやすい人に特徴的であるという。