ビットコインがついに「分裂」!? 一体どんな問題が生じるのか

8月1日から取引が一時停止となるが…
野口 悠紀雄 プロフィール

改善のための提案

細かい点を省略して、これまでの大まかな経緯を述べれば、次の通りだ。(拙文「ビットコインを分裂させかねない『フォーク』とは何か」ダイヤモンド・オンライン、2017年7月13日、参照)

改善の方法としては、まずブロックのサイズを拡張するものがある。ここで、「ブロック」とは、10分間のビットコインの取引記録を収納する箱のようなものだ。

この方法は、大手マイナーが支持している。これによってより多くの取引を処理することができるため、手数料収入が増えるからだ。

 

しかし、サイズの大きなブロックを扱えるコンピューターは限定されるので、寡占状態がさらに進む危険がある。このため、コア開発者や取引所は、乗り気でない。

第2は、取引データを圧縮する方向だ。2015年の12月にsegwitという画期的な方法が提案された。

segwitは優れた方式であるし、ビットコインで少額の送金(マイクロペイメント)などを行なう際にも必要になる。そこで、コア開発や取引所は、この方向を望んでいる。

しかし、手数料が下がるので、マイナーは乗り気でない。また、中国の大手マイナーのビットマンが製作しているマイニング用の機械が使えなくなるという事情もある。

大まかに言えばこの2つの方式が対立しており、どちらを取るかについて、コア開発者と取引所のグル―プとマイナーのグループの合意が成立していないのが現状だ。

「ソフト」分裂か「ハード」分裂か

しびれを切らしたコア開発者のグループは、「2017年8月1日から、segwitに同意していないブロックは取引所が拒否する」という提案をした。これは、BIP148(ビットコイン改善提案148号)と呼ばれる。

8月以降においても、segwitに同意していないブロックをマイニングし続けることはできる。だから、この提案によってすべてのマイナーがsegwitを採用するわけではない

そうなると、segwitに対応するブロックと対応しないブロックという2つの系列ができてしまうことになる。これを「フォーク」(分岐)と言う。この場合はソフトフォークと呼ばれる。そのため、BIP148は、UASF:user activated soft forkと呼ばれる。

しかし取引所が扱わないブロックは当然、人気がなくなる。ビットコインのルールによれば、分岐した場合には短い方の枝は切り捨てられる。そうなると、マイナーは報酬を得られない。そこで、マイナーは、自動的にsegwitに対応するだろう。このため、分岐は一時的なものにとどまる。これがBIP148の提案者の目論見だ。

しかし、そうならない可能性もある。その場合には、分岐は恒久的になってしまう。

一方、マイナーのグループは、UASFに対抗するものとして、segwit2xという提案をしている。

これは、「segwitを実装するが、11月にブロックの容量を拡張する」というものだ。

ブロックサイズが拡大されると、対応していないマイナーはビットコインをマイニングできなくなる。従って、ビットコインのマイニングを続けるためには、強制的にアップグレードさせられることになる。

しかしながら、何らかの理由によって(例えば思想的な理由によって)、旧来のビットコインのマイニングを続けたいマイナーがいるかもしれない。その場合には、ビットコインは2つに分裂することになる。これをハードフォークという。

segwit2xのためのソフトウェアは、7月末までに配布するとされている。しかし、今のところまだ準備ができていない。

なお、分岐(フォーク)は複雑な概念であって、以上では十分に説明できないところもある。(これについては、前記「ビットコインを分裂させかねない『フォーク』とは何か」ダイヤモンド・オンライン、2017年7月13日を参照。)