『夫のちんぽが入らない』こだま氏の意外な「オカネの使い道」

「原稿料なしでお願いできませんか?」
鈴木 涼美 プロフィール

言えないことをして稼いだお金なので、もらいたくない

本にあるようにこだまさんは元々地方の学校で教員として働いており、その後は情報誌のライターなどの職を転々としながら、細々とブログやネット投稿サイトで一部のファンを獲得していた。

既に知られているように、『夫のちんぽが入らない』は元々そのネット投稿サイトの仲間たちと作った同人誌に収められた短編エッセイだった。編集者の強い勧めで単行本化され、今では雑誌の連載も持つ。こじんまりとした世界から、今のような未来は到底想像していなかった。

 

「元々喋るのがとても苦手で黙ってしまう方だったので、ネット文化ができて発信するということが楽しいなと思ってブログは続けていました。知らない人でも私の書いたものを読んでくれる、というのはとても面白かった。

ただ、同人誌に書く、ということ自体がまずかなり冒険で、書いている行為自体はブログと変わらないのだけど、40歳前の小さな挑戦、という感じで。

さらに出版となるとお金が入ってきちゃうのがネックで。夫に言ってないこともあって、出版社さんに、原稿料なしでお願いできませんか?って言ったことがあるくらい。そこの問題を今の編集者さんがクリアしてくださったので、出版に至ったという感じです。

田舎育ちだと、エンタテイメントって本くらいしかないので、紙の本にはやっぱり特別な思いはあります」

どうでもいい余談だが、私自身は、稼いでいるお金に対して使い道の方が有り余っていてお金は一切有り余っていないタイプである。大体3億円くらいならば、戸惑わずさらっと使い切る準備はいつでもできている。

だから、お金が儲からないことではなくて、お金が儲かってしまうことが作家になるネックであったというこだまさんの話をすぐには理解できなかった。

Photo by Riki Kashiwabara

「言えないことをして稼いだお金なので、もらいたくないんです。そもそも欲しいものがなくて、知り合いで使ってくれないかな、っていう感じです。

夫もそんなにお金を使う人ではなくて。あまりお金を手にしていないので、すごく売れたとか稼いだっていう実感はないですね」

今も変わらず、夫の稼ぎと、毎月ほんのちょっとだけもらう原稿料で暮らす。欲しいものと聞いて思いつくのはセンスや締め切りを守れる力なんかが先にきて、お金で買えるものは思いつかないという。

自分が稼いだお金は、人に言いたい仕事で稼いだものであろうと人に言えない仕事で稼いだものであろうと、最後の1円まできっかり自分のためだけに使おうと思っている私としては、こだまさんのそう言った感覚は想像を超え過ぎていてほとんど「何食ってるんですか?」という感じである。