「選手を絶対に叱らない」野球指導者が教える「勝利とは何か」

やっぱり、暴力は答えではなかった
元永 知宏 プロフィール

勝利より大事なことがある

阪長は現在、堺ビッグボーイズという中学生のクラブチームをサポートしている。2度も全国制覇を果たした強豪として知られているが、7年前から指導方法を大きく変えた。

「全国制覇したチームからプロ野球に進む選手が出ず、ひとりも大学で野球を続けなかったことに気づいて前の監督が方向転換しました。いま、埼玉西武ライオンズでプレイしている森友哉捕手がいるときにやり方を大きく変えました」

全体練習を短くして、選手自らが課題に積極的に取り組むように、自主練習を増やした。投手に関しては、球種の制限を設けて、スライダーやフォークボールは禁止にしている。

「ドミニカのアカデミーの投手はスライダーもフォークも投げません。カーブやチェンジアップをまともに投げられない投手もいる。『それで打たれてもいい』というのが彼らの考え方です。私たちのチームではカーブとチェンジアップはOKにしていますが、割合は決めています。『ストレートをどんどん投げろ』『打たれても怒らないから攻めろ』と言っています」

 

もちろん、試合では勝つことを目指して戦うが、勝利よりも大事なことがある。勝利数は減ったが、「堺ビッグボーイズで野球をしたい」という選手が増えてきた。

「以前は学年20人くらいでしたが、いまは50人もいます。途中でやめる選手はほとんどいません。 好きな練習をさせて、言いたいことを言わせるようにしています。

ずっと前向きな言葉をかけていると失敗を恐れることなく、『オレ、できる!』『やったるぞ』と日本の子どもでも思うようになります。試合のとき、ベンチにいる選手が『自分を使え』とプレッシャーをかけてくる(笑)。

方針を変えてから、大学、社会人まで野球を続ける選手が増えました。私たちのやり方だけが正しいとは思いません。子どもたちがのびのびと、自分を主張できる環境をつくりたいと考えています」

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2017年1月、チームのOBである筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ)が堺ビッグボーイズ小学部の スーパーバイザーに就任した。WBCに出場した侍ジャパンの四番打者の思いがここにある。

「彼自身、『子どもたちにはこういう指導をしたほうがいい』という思いを持ってるので、2015年4月に小学部 を立ち上げました。野球という枠にとどまらず、跳び箱だったり、でんぐり返しだったり、体を発達させることをどんどん取り入れています」