「人の話は最後まで聞け」というマナーは、世界の非常識だった

だから世界のビジネスで勝てないのだ
ムーギー・キム プロフィール

日本人の悪いクセ

ここまで紹介した三つの方法を頭に入れれば、明日から異文化コミュニケーションは完璧!と言いたいところですが、得てして理論と実践は異なるもの。最初にある程度衝突が起きるのはやむを得ず。経験的に学ぶしかないこともあります。

最後に、異文化コミニュケーションの実践にあたって大事なことを、私の経験から二つ挙げておきたいと思います。

一つは、自分のコミュニケーション「スタイル」を自覚すること。

人は異文化の中に入ってみてはじめて、自分が慣れ親しんだものが世界ではふつうではないと気づきます。文化的バックグラウンドの違いを目の当たりにすることで、ようやく自分のやり方を変えてみる必要性を実感するのです。私自身は留学先のインシアードで、なかば強制的にそのような体験をすることになりました。

「組織行動論」の授業の一コマ。ダイレクトなコミュニケーションの度合いが最も低い国民として日本人が挙げられ、それを裏づける動画まで用意されていました。若い日本人が質問に対して「はい……、はい……、はい……」と答えていくのですが、それぞれの「はい」は微妙にニュアンスが違っていて、肯定だったり否定だったり疑問だったりするわけです。

「こんなこと本当にあるのか!?」と、クラスメート約150人の視線が私に集まりました。その教室で唯一の日本人でしたから。

文化的なステレオタイプをわざわざ強調していったいどういうつもりなのか。これはもはや人種差別ではないか。こんな動画を用意した教授に、私は強烈な不満と不信感を抱きました。

その場で私は「単にコンテクスト(=状況や関係)依存なだけでは?」とコメントしましたが、「まさにコンテクスト依存こそが、ダイレクトでないコミュニケーションの特徴である」と教授にみごとに切り返されてしまいました。

不満を抱きつつも、日本人に特徴的なコミュニケーションのパターンが、自分の中にも確かにあることを認識せざるを得ませんでした。

 

失敗を恐れず、前に出よう

もう一つは、失敗を恐れず経験値を積むこと。自信を得るまで場数を踏むことです。私の場合、インシアードという実験的な環境で失敗を恐れずトライし、フィードバックをもらうことができたのは幸運でした。

グループワークなどで、あえてあつかましく前に出るということもやってみました。一時的に場の雰囲気が悪くなったりもしましたが、それで人間関係の修復が困難になることはありませんでした。むしろ、結果的にメンバーの信頼を得ることにつながったように思います。

こうしたチャレンジのくり返しが、ダイレクトに主張することの経験値となり、自信につながったと思います。

コミュニケーション文化の違いに足を引っ張られることなく、どんな場所でも堂々と活躍する日本人が増えてほしい。そのためにも、ぜひ「失敗や間違いを恐れず、自主的に曖昧な譲歩をせず、ダイレクトに伝えるコミニュケーションスタイル」を実践してほしいと思います。

今回のインシアード修了生:

小中島 洋平(こなかじま・ようへい)
株式会社情報工場 取締役(経営企画・財務担当)。大学卒業後、みずほ銀行入行。国内支店で法人営業、アジア業務管理部(香港)にてアジア地域の営業推進・企画業務に従事。帰国後はコーポレートアドバイザリー部にてM&Aアドバイザリー業務を担当。退職後、海外留学を経てA.T.カーニーに入社し、金融、製薬、不動産、通信など幅広い業種の新規事業開発・業務プロセス改善等のコンサルティング業務に従事。2017年、情報工場に参画。慶應義塾大学法学部卒、INSEAD MBA。

監修:

ムーギー・キム
INSEADにてMBA取得。グローバル金融機関、投資ファンドで勤務したのち、シンガポールでベンチャー投資・育成業務に参画する傍ら、ビジネス作家としても活躍。3冊の著書はいずれもベストセラーとなり、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』『最強の働き方』(東洋経済新報社)と『一流の育て方』は合計で50万部を突破、6か国で展開されている。著者への問い合わせは、公式HP→www.moogwi.com

編集協力:

畑中 景子(はたなか・けいこ)
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)。ザ・リーダーシップ・サークル認定プラクティショナー(TLCCP)。個々人のリーダーシップの開花が、本人の人生をダイナミックにし、面白くてエコな社会を実現すると信じ、若手からエグゼクティブまで幅広い層の意識の目覚めと本質的な変化を支援している。慶應義塾大学法学部卒、INSEAD MBA。