知ってましたか? 歌舞伎界・梨園の「格付けと格差」

いちばん地位が高い「梨園の妻」は誰?
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トップ4の顔ぶれ

では、團十郎が不在のいま、歌舞伎界のトップは「市川宗家」の家長、海老蔵なのだろうか。いや、冒頭のようにそう簡単なことではない。

「吉右衛門さんらの重鎮には頭が上がらないでしょう。歌舞伎役者で構成される日本俳優協会の役員にも、海老蔵さんの名前はありません。それはまだ『團十郎』ではないから。あくまで修行の身です。

歴代を見ても團十郎になるまでには時間がかかる。海老蔵から團十郎になるまで、30年、50年とかかる場合もある。それほどの存在なんです」(喜熨斗氏)

つまり、海老蔵が『團十郎』を襲名するまでは、歌舞伎界のトップはお預けというわけだ。

市川海老蔵Photo by GettyImages

「いまの時代で言うなら、俳優協会の会長を務める坂田藤十郎(85歳)さんが別格扱いです。出演したら必ず一番いい楽屋を使いますし、一番出演料も高いでしょう」(喜熨斗氏)

藤十郎と言えば、三代目中村鴈治郎時代の'02年に京都の舞妓との密会を「FRIDAY」にスクープされ、バスローブの前がはだけていた写真のインパクトが強い。とはいえ、江戸の市川團十郎、上方の坂田藤十郎は揺るぎない存在か。

一方ではこんな声も。

「藤十郎さんは歌舞伎界のトップではありますが、体力的に第一線の役者とは言い難いですし、象徴的な存在と言ったほうがいいかもしれません」(歌舞伎興行関係者)

歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)の著者である作家・編集者の中川右介氏はこう言う。

「團十郎不在のいまは集団指導体制にあります。それは歌舞伎座の公演を見ればわかります」

'13年4月にニューオープンした歌舞伎座は3ヵ月にわたり柿落とし興行を行った。合計して21演目が上演され、主役を張った役者は10人いる。

坂田藤十郎、尾上菊五郎(74歳)、片岡仁左衛門(73歳)、松本幸四郎(74歳)、中村吉右衛門(73歳)、中村梅玉(70歳)、坂東玉三郎(67歳)、坂東三津五郎(故人)、中村芝翫(当時は橋之助、51歳)、そして、海老蔵。

いずれも名門の一家の長である。海老蔵だけがかなり若いが、これも「市川宗家」がいかに特別かを物語る。

「なかでも菊五郎、幸四郎、仁左衛門、吉右衛門がいまのトップ4といえます。それに次ぐ存在として梅玉が上がってきました。一般的な知名度は4人に劣りますが、名門である中村歌右衛門家のトップになります。

もっとも、梅玉の格上げは十二代目市川團十郎、十八代目中村勘三郎が亡くなったことの影響も大きいでしょう」(中川氏)

 

「団菊」と称されるように、成田屋に次ぐ存在なのが、尾上菊五郎家(音羽屋)なのである。

歌舞伎の世界における格差でもっとも顕著なのは、歌舞伎座にどの役で出られるかだという。

そして近年の歌舞伎座の興行は、この5人が座頭(公演のメイン)になっている。座頭は他の出演者のキャスティングにも影響を持ち、それゆえ名門一家からは、次のスターが生まれやすい。

「5人のなかでは、家柄、名跡の格で菊五郎がトップ。そして幸四郎、仁左衛門、吉右衛門が同格でしょうね。名前だけならまだ二代しか続いていない吉右衛門はやや格下ですが、ドラマ『鬼平犯科帳』などでも知られる当代は実力でいまの地位を築いた。

吉右衛門は年長の幸四郎や仁左衛門を抜いて、俳優協会でNo3の専務理事を務めています」(中川氏)

本来ならば、これに続くのは玉三郎だが……。

「玉三郎は一般家庭に生まれながら、その才能と実力を認められて名優・十四代目守田勘彌の養子となった当代一の女形です。しかし、体力的な問題なのか、近年は歌舞伎の出演自体が減っています」(前出・歌舞伎関係者)