統計学を駆使して占う、稀勢と高安「名古屋場所のゆくえ」

データは照ノ富士有利を示すが…
鳥越 規央 プロフィール

近ごろ照ノ富士の復調がスゴい

さて、横綱を目指すとなれば、さらに取りこぼしは許されない。

関脇以下との勝率は、大関昇進に必要な.750程度では十分ではない。本場所の通常開催が再開された(※東日本大震災の発生で夏場所は開催断念)平成23年名古屋場所以降における、大関の対関脇以下の力士との勝率を見てみよう。

力士名 大関在位期間 対関脇以下勝率
日馬富士 平成23年7月〜24年9月 .798
鶴竜 平成24年5月〜26年1月 .786
稀勢の里 平成24年1月〜29年1月 .788
豪栄道 平成26年9月〜29年5月(在位中) .667
照ノ富士 平成27年7月〜29年5月(在位中) .625

のちに横綱に昇進する3力士は、大関時代に下位に対して.780以上という圧倒的な勝率を残している。それに対し、現在大関の地位にある豪栄道や照ノ富士は7割にも満たない。

豪栄道は昇進前こそ7割を超える勝率をキープしていたが、大関に昇進した平成26年名古屋場所で対関脇以下に6勝5敗と取りこぼしまくり、それ以降は一度も7割を超えていない。

一方、照ノ富士は大関に昇進した平成27年名古屋場所で、関脇以下に10勝0敗(場所計11勝4敗)、次の場所も10勝1敗(場所計12勝3敗)と圧倒的に勝ちまくる。そのまま一気に横綱昇進も期待されたが、場所後の検査で靭帯と半月板の損傷が発覚。その後、対関脇以下勝率が6割を切る状態が続いた。

 

しかし、平成29年春場所は対関脇以下12勝1敗(場所計13勝2敗)で、新横綱・稀勢の里に敗れはしたものの、優勝決定戦に臨むまでに回復。次の夏場所も11勝2敗(場所計12勝3敗)で、直近3場所の対関脇以下勝率はついに7割を超え、大関昇進時の勢いを取り戻しつつある。

関脇以下との対戦が続くであろう前半戦を全勝もしくは1敗で乗り切ることができれば、横綱昇進の布石が打てることだろう。今場所の照ノ富士には注目しておきたい。

また、今場所の台風の目になりそうな新大関・高安は、最近6場所の対関脇以下勝率が.733。このペースを維持できれば、自ずと横綱への道は拓けてくるだろう。

ちなみに、現在の4横綱の対関脇以下勝率は以下の通りだ。

力士名 横綱在位期間 対関脇以下勝率
白鵬 平成23年5月〜 .919
日馬富士 平成24年11月〜 .793
鶴竜 平成26年5月〜 .770
稀勢の里 平成29年3月〜 .818

さすが横綱、いずれも8〜9割の高い勝率を残している。とりわけ、白鵬の勝率は驚異的としか言いようがない。白鵬の圧倒的な強さの秘訣は、下位に取りこぼさないことにあるようだ。横綱在位59場所で供給した金星はわずか16個。1場所あたり0.27個で、これは昭和以降の横綱でもっとも少ない数字である。

横綱になれるのは入門者の0.2%

近年にない大きな盛り上がりを見せている名古屋場所なので、これから活躍する若い力士たちの現状にも触れておこう。

将来の横綱を目指して多くの若人が角界の門を叩く。平成以降の入門者は3275人、そのうち関取(十両以上)に昇進したのはわずか258人、入門者の7.9%に過ぎない。そのうち大関昇進を果たしたのは16人で0.5%、横綱はたったの6人で0.2%という厳しい道のりだ。

しかし、狭き門をくぐり抜けて十両以上になれれば、才能と努力、幸運にふさわしい、相当な年収を得ることができる。十両は1622万円以上、関脇小結は2632万円以上、大関で3723万円以上、横綱だと4551万円以上にもなる(汐留パートナーズ税理士法人調べ)。

また、それとは別に「力士報奨金制度」があり、地位と成績、在籍年数に応じて報奨金が支給される。金星を取ると4万円、優勝すると12万円の報奨金が加算される。白鵬は給与とは別に年額4000万円ほどの報奨金を得ているはずだ。優勝賞金や懸賞金などを加算すると、相撲そのものから得ている収入だけでも1億円を軽く超えるだろう。