小池百合子「総理への道」はこうして作られる

待望論が出るまで動かない
週刊現代 プロフィール

菅と二階が考えていること

事態が動いたのは翌28日のことだ。投票日4日前。メディアが一斉に稲田を批判、野党が辞任要求をはじめたばかりか、週刊文春が、下村博文元文科相への加計学園の献金疑惑を報じることがわかった。下村は自民党東京都連会長、都議選の責任者である。

下村博文Photo by GettyImages

よりによって加計か!杉田官房副長官から文春の記事を手渡された菅は、何度も舌打ちしていた。

「これじゃあ、受託収賄になってしまうじゃないか。どうやったって、繕うことなんかできる状態じゃないじゃないか!」

菅が顔を紅潮させて大声で怒っているあいだ、今治市に行っていた麻生太郎副総理が急遽帰京し、官邸に入った。

「財務事務次官らを10分ほどで退室させ、安倍と麻生だけの30分に及ぶ密談が行われました。投票日前日のサプライズ遊説の相談にくわえ、稲田・下村スキャンダルの対応と、都議選敗北後の政権運営について話し合った模様です」(政治部記者)

口の堅い麻生は、側近にこう漏らすだけだった。

「すべては、都議選の負け具合を見てからだな」

側近はこう推測した。

「何がどうなるなんていう生やさしい話じゃない。来年の任期満了まで、どうやって総理に居座るかの話に決まってる」

その日の夜、安倍は都内のフランス料理店で御手洗冨士夫経団連名誉会長らと会食したが、笑顔は一度もなかった。出席者が記憶するのは、何度も電話が入り、そのたびに慌てたように会食を中座する安倍の姿だ。

なすすべもないまま投票日を迎え、自民党は完敗した。「都議選の敗退は織り込み済み」と嘯くものの、安倍のストレスは、極限に達している。

「『お友達』登用が元凶。一連のスキャンダルで名前が挙がった萩生田、下村、稲田らは、みな安倍総理の出身派閥である清和研の議員たちです。

加計問題では、理事長とみずから『親しい』と喧伝してきた以上、いくら適正な手続きだったといったところで、そんな理屈は通用しない。総理個人の信用が損なわれたのです」(政治部デスク)

 

焦る安倍は選挙期間中、破れかぶれともいうべき行動に出ている。

6月24日、神戸市で開かれた講演会では、安倍の二つの発言が注目を集めた。ひとつは、秋の臨時国会中に、憲法改正案を提出するという発言だ。

「党内の同意をとっているかも疑問で、あまりにも唐突だった。話題をつくって疑惑を隠そうとした」(別の政治部記者)

さらにもうひとつ、口を滑らせた。加計問題について「獣医師会が、獣医学部新設を1校にしてくれといったので、そうしただけだ。中途半端な妥協が国民的な疑念を招く一因となった。速やかに全国に獣医学部の新設を認めていく」と発言したのだ。

これに怒るのは、日本獣医師会の「重鎮」といわれる北村直人顧問だ。

「ひどい暴言で、こんな人物が日本のリーダーのままでいいのかと思いました。私たちは'15年の12月に山本幸三地方創生担当相に会い、一切の獣医学部新設に反対であることを申し上げた。

安倍政権が獣医学部新設を既定路線と考え、現実問題として阻止するのが難しいとわかったから、『たとえ4条件をクリアするところがあっても、新設校はそれ1校にとどめてほしい』と申し上げたまでです。首相は、自分の都合のいいところだけを抜き出して発言している」

安倍の苛立ちを加速させるのは、側近たちだ。

まず、菅官房長官。もう尽くすのには疲れたとばかりに、「党務に戻して下さい」と安倍に懇願してきた。宿願の幹事長ポストを欲しがったのだ。安倍はこう冷たく返した。

「感情的になった俺の答弁で火を付けちゃったわけだ。官房長官はかばってくれようとしただけで、初動ミスは私だ。だから、官房長官職は続けてもらいたい。いいですね」

加計問題では文科省文書を「怪文書」扱いしたとして、世論のメッタ打ちにあった菅は、安倍を恨みはじめている。

〈俺とは何の関係もない話じゃないか。あんたの「お友達」案件なのに〉

党内で絶大な権力を持つ二階幹事長は、腹心の今村復興相を、自分の頭越しにクビにされた恥辱を忘れてはいない。

「8月下旬に予定される内閣改造で、安倍首相は菅、二階を続投させる方針です。枢要な二人を替えてしまうと、政権の異変を認めたことになりますから。だが、人事に不満を持つ二人がタッグを組むのを総理は恐れている」(前出・政治部デスク)