異例の3期続投・森金融庁長官が金融機関に与える「最後の猶予1年」

「捨てられる」銀行は一体どこなのか…
橋本 卓典 プロフィール

金融庁が「年金改革」に乗り出す

ずばり、森金融行政が進める資産運用改革「3期目」の狙いは何だろうか。

その一つは「年金改革」だ。

もちろん、年金は厚生労働省の所管であり、金融庁が直接的に介入することはできない。しかし、間接的にであれば、話は別だ。

厚生労働省の所管する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、資産運用会社に対して、運用担当者の報酬が適切なのか、資産運用会社のガバナンスは適切に機能しているのか、確認を求めている。

GPIF・高橋則広理事長記者会見するGPIFの高橋則広理事長 photo by gettyimages

取引注文(マンデート)をおろすからには、責任ある資産運用会社は、販売会社との利益相反を適切に管理し、運用パフォーマンスの最大化に努めるべきだ、という圧力と言っていいだろう。

森長官は4月7日、日本証券アナリスト協会で講演し、以下のように述べている。

「運用会社だけでなく、アセットオーナーの役割も重要です。たとえば、年金基金には、掛け金を拠出している国民に対して、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を十全に果たすことが求められます」

「アセットオーナーは、自らの資金を委託するのに最もふさわしい能力を持った運用会社を見極める必要がありますが、仮に年金基金が、運用会社グループとのリレーションによって取引注文(マンデート)を与えているとすれば、それはフィデューシャリー・デューティーの観点に照らして問題があります」

「アセットオーナーとしてのクオリティが高く、中長期的に素晴らしい運用成績をあげている米国の大学の基金や年金基金には、例外なく、優れた目利き力、運用能力を持った責任者がいます。我が国の企業年金についても、企業内の人事異動でなく、プロとして適切な能力・判断力を有した責任者を内外の幅広い候補者から選び、配置することが望まれます」

 

捨てるべき運用会社を選別せよ

森長官があえて(所管外の)年金基金に触れたのはなぜだろうか。

GPIF以外の企業年金などにも、「選ばれる運用会社」と「捨てるべき運用会社」の選別を行わせることで、運用会社に対し、グループ内の販売会社のためではなく、自らの運用力強化のために行動させるよう仕向け、究極的には資産運用業界の活性化を図ることが狙いであろうと、筆者は考えている。

森金融庁は、金融機関に対して「顧客本位の業務運営に関する原則」を突きつけ、自らの成果指標(KPI)を策定し、公表するように求めている。これは言わば、顧客がどの金融機関を選ぶべきかを「見える化」する取り組みだ。

顧客からの「見える化」と、企業年金のような巨大機関投資家からの「どの運用会社にマンデートをおろすべきか」という圧力で包囲網を形成することによって、カネの流れを変え、これまでの金融機関のあり方、そのすべてを変えようとしているのである。

金融庁がルールやマニュアルに沿って一社一社を指導する時代は終わった。本来の使命を自覚して、ベストプラクティスに向けて行動しなければ、どんな金融機関にも捨てられる日がやってくる。

森金融行政3期目のこの1年は、金融機関が最終判断を下すべき最後の時間となるだろう。

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