異例の3期続投・森金融庁長官が金融機関に与える「最後の猶予1年」

「捨てられる」銀行は一体どこなのか…
橋本 卓典 プロフィール

若手銀行員が不憫でならない

しかし、「貯蓄から資産形成」への移行は、容易に進まない可能性がある。

なぜならば、圧倒的な資金・資産を有する(=全世帯の貯蓄総額の6割以上を占める)60歳以上の高齢者層は、保有する資産では生活費や医療費をまかなえなくなるほど長生きする恐怖と、向き合って生きなければならないからだ。

そうした高齢者層の不安につけこむことで、銀行や証券会社は、まったく資産形成につながらない毎月分配型の投資信託を売りつけることができた。

「年金を受け取る気分で」というお得意のセールストークで、毎月課税されるデメリットがある上、複利の恩恵を放棄するという実りのない投資商品を、入社・入行したばかりの若手社員に売らせてきたわけだ。しかも、厳しい営業ノルマを課して。

脱線するようだが、決算書を渡されても企業と何ひとつ話ができない若手銀行員が増えていることを知っているだろうか。そしてそれはなぜだろうか。

答えは、投資信託や保険を売るための勉強があまりに大変で、融資の勉強まで手が回らない、ということらしい。

資産表も資金繰り表も読めない銀行員、信用保証協会の保証付き融資しかしたことがない銀行員を見るにつけ、事業者の力になりたいという高い志を持って銀行の門を叩いた若者たちが不憫でならない。

意に沿わず高齢者に「非産運用」な商品を売らされる彼ら彼女らの気持ちを思うと、最近は地方銀行の若手行員が次々にやめていくという話にも頷ける。このようなことを続けて本当によいのだろうか。

落胆する運用会社社員意に沿わない商品販売で若手職員・社員のモチベーションが上がらない photo by gettyimages

アパマンの相続税減免は妥当か

話を戻そう。

非課税期間20年の積立NISAは、日本の平均寿命を考えれば、たとえ60歳から始めても、資産形成の強力な武器になるはずだ。しかし、そうした効果的な制度が導入されてもなお、資産運用に対する高齢者層の意識がすっかり変わるまでには、相当の時間を要することだろう。

であれば、我々が考えなければならないのはやはり相続だ。

 

現状、株式や投資信託の相続には減免措置は講じられない。一方、マンションやアパートを相続する場合には減免措置が講じられる。だから、相続税対策として、マンションを購入したり、アパート経営を始める高齢者が増えている。

こうした減免措置を認めることで、本当に妥当な経済効果を得られるのだろうか。

国はいまのところ、「金持ちを優遇することになる」という理由で、株や投信に対する相続税の減免を認めていない。確かに、創業者が保有する株式の相続については、金持ち優遇になるという指摘はわからなくもない。しかし、長期積立投信までもが「金持ち優遇」というのは、まったく理解できない。

証券、資産運用業界はこれまでも軽減措置の適用を求めてきたが、税制の壁は厚い。投資運用によって得られる経済効果、資産形成効果も含めた税収については、まともに論じられていない。

金融庁による資産運用改革の機運は、多くの資産運用業者を勇気づけたはずだ。税制さえ変われば、長期停滞を宿命づけられたように思えるこの国でも、資産運用をテコに変わっていくことができるのだ。