「離婚はしないがカネはくれ」婚姻費用で人生台無しになりました

カードローン地獄に陥る人まで…
西牟田 靖 プロフィール

家に帰ると置き手紙が

ロボット開発を手がける大手のエンジニア、Tさん(49)はAさんやSさん同様、帰宅後、家から妻子がいなくなっていたケースだ。

「4年前、帰宅すると14歳年下の妻と生後7ヵ月の娘がいないんです。部屋には置手紙があり、『あなたは私のことを対等に見てくれませんでしたね』と書いてありました」

5年前、中国地方にある実家に妻は里帰り出産、二人が関東に戻ってきてからは育児休暇を2週間取得し、ともに育児をした。ところが翌年の始め、妻は娘を連れて突然家を出て行った。

その後、妻からは離婚や婚姻費用の調停を申し立てられる。一方、Tさんは娘との面会交流などの調停を申し立てた。離婚は成立しておらず、婚姻費用を払っている彼は、現在ひときわひどい経済的苦境に置かれている。

「今年に入ってからは、親から受け継いだ遺産や結婚前から持っていた貯金すら尽きてしまい、いまやカードローンに頼っています。面会交流の調停のおかげで、2年間で30分ずつ合計2回しか会えなかったころに比べると、昨年10月以降、2ヵ月に1回、娘に会えるようになったのは幸いです。

しかし娘に会うのに毎回かなりの出費です。飛行機だと5、6万円、新幹線で4万円前後、高速バスで3万円前後と往復でかかりますから。ドタキャンされたこともありますよ。だからキャンセルのきかない早期割引購入チケットは手を出せません」

彼の給料は総額で600~700万円。妻はパートの仕事をしており、娘1人ということで、算定表の額面通りの12万円を支払っている。

 

「婚姻費用はもう4年以上払っています。合計で600万円以上払っていますが、離婚はまだ成立する見込みがありません。

娘がいなければ、親権や監護権の問題が発生しないわけだし、妻の要求していた慰謝料300万円を支払って素早く離婚していたと思います。しかし、親権の決着がつかないため離婚が成立せず、婚姻費用が膨れ上がった。結局、慰謝料以上のお金を支払っています。

今後、離婚したらしたで、様々なお金が生じますので、そのときは多額の借金をする必要がでてきそうです。

着手金しかまだ払っていませんが、離婚や婚姻費用のほかに子の引き渡しや保全処分、面会交流と様々な調停を依頼しましたから、弁護士にも報酬を支払わなければなりません。離婚が成立すれば、妻の生活費を払わなくてよくなりますが、養育費は月々6、7万円発生するでしょう」

Photo by iStock

お金が欲しいので離婚はしません

次に紹介する二人は年収1000万円を超える高額所得者のケースである。一人はメガバンク、もう一人はテレビ局勤務という、人がうらやむような職業の人たちだ。エリートだから故の大変さはあるのだろうか。

「妻とは2年交際した後に結婚をしました。4年前のことです。しかし結婚期間は2週間しかありませんでした。というのも、まだ乳飲み子だった息子を妻が関西の実家に連れて帰ってしまったからです。

私の年収は約1300万円。内訳ですが、給与所得が総額1000万円で不動産収入が300万円です。一方、妻の年収は360万円と計算され、婚姻費用は11万円となりました」

そう話すのはメガバンクで働いているFさん(47歳)である。収入の割に婚姻費用が安いのは、これが3度目の結婚で、最初の結婚で長女、二回目の結婚で長男と次女という三人の子どもがすでにいるからだ。

「長女の養育費は毎月5万円です。長男と次女ですが、当初は長男のみに5万円という双方が合意した額を払っていましたが、その後、裁判で次女の養育費を3万円支払うようにという決定が出たため、二人分で8万円となりました。二人の割に安いのは、前妻の収入が約900万円あったからです」

とすると、4人合わせて毎月24万円を払っているのか。

「長女に関しては、2年前から養育費の支払いを中断しています。元妻から『もう払わなくてよい』との申し出があったためです。

ちなみに長女とは別れてから一度も会わせてもらっていません。長男と次女に関しても現在は払っていません。前妻が再婚し、二人の子は再婚相手の養子となったからです。

それを受け、裁判で養育費は0円と確定しました。ですので今は二男と妻の婚姻費用、11万円だけを払っているということになります」

結婚生活をどう振り返るのか。

「私はさんざん結婚に失敗していますが、今からでも平和な家庭を築いてパートナーと一緒に子育てしたいし、今会えていない子供たちに対しても可能な限り関わり、成長に貢献していきたいと願っています。

同居しなくても養育費以上の金を受け取れるから、妻からは離婚の申し立てはありません。今後、彼女が金持ちで都合のいい男性と出会えば、再婚するために離婚を申し立ててくるでしょうけどね」