戦後最大の「1兆円倒産」タカタはどこで何を間違えたのか

銀行はこうして創業家を見捨てた
週刊現代 プロフィール

実権を握るゴッドマザー

タカタの危機対応が遅れたのは、部品メーカー独特の企業文化も根底にある。これまではリコール問題があっても、自動車メーカーが矢面に立つことが多かった。だから部品メーカーは、あえてメディアに出る必要もなかったし、広報戦略などほとんどないに等しかったのだ。

「部品メーカーの社長がメディアにしゃしゃり出てきて、悪目立ちすると自動車メーカーににらまれる。『そんなに景気がいいことを言うなら、納入価格をもっと下げられるだろう』と脅されかねないから黙っているんです。

高田会長が表に出てこないのは、『良いときに出ないなら、悪いときにも出なくていい』という意識なのでしょう」(大手自動車メーカー下請け社員)

 

たとえば、トヨタは'09年に大規模リコールがあり、全米でバッシングの嵐が吹き荒れたが、米議会での公聴会に豊田章男社長が出席し、しっかりした英語で質疑応答を行った。対してタカタの場合は公聴会に高田会長は出席せず、代わりに品質管理の担当者を出した。

豊田章男社長Photo by GettyImages

「技術的な質問をされたら答えに窮するという理由もあったかもしれませんが、こういうときはトップが出ていくのが当然のこと。

同族経営の会社には往々にしてこういうことがあります。私がかつて社長を務めたペンタックスも同族企業だったが、いいときも悪いときも創業家が表に出ることを好まなかった。創業家は江戸時代の大名と同じで、次世代に引き継ぐことが最大の使命なので、表に出てもなんの得にもならないと考える人が多いのです」(前出の浦野氏)

以前タカタに勤めたことのあるバリエント・マーケット・リサーチのCEOスコット・アップハム氏が高田会長のことを語る。

「私は20年ほど前の彼のことを知っています。頭はいいのですが、引っ込み思案で物静かなパソコンオタクでした。タカタのような危機に陥った会社の経営には、向いていないタイプではないでしょうか。一方、会長の母親である暁子氏は非常に実務能力の高い人です」

暁子氏は表向きは直接経営に関与していないことになっているが、隠然たる影響力を持っている。今年5月には日経新聞のインタビューにも答えているから驚きだ。

「なぜ息子の重久氏でなく母の暁子氏が答えるのか、理解に苦しみます。リコール拡大が止まらなかった理由を問われ、『クルマの中に組み込まれる安全部品メーカーとしての限界もあり、問題が起きた時に自主的に動き、自動者メーカーともっと共同で取り組むべきだったと反省しています』と、あたかも自動車メーカーが問題解決に協力してくれなかったような口ぶりでした」(全国紙経済部デスク)

法的整理ということになれば、タカタの株は紙切れになる。保身に走るあまり、表舞台に出て頭を下げることを嫌った創業家の人間が、再び経営の手綱を握ることはないだろう。

「週刊現代」2017年7月8日号より