東京オリンピック「経済効果予測」のオカシさを暴こう

「7兆~32兆円」の根拠ってなんだ?
森田 浩之 プロフィール

首を傾げたくなる「付随効果」

民間の予測はどうだろう。たとえば、みずほ総合研究所が今年2月に発表したリポートを見てみる。

この試算では、2020年東京オリンピックによる経済的な「直接効果」を約1.8兆円、「付随効果」を28.4兆円とし、計30.3兆円の経済効果があるとした。

対象としている期間は2014〜2020年であり、東京都の試算のように大会後の「レガシー」は含んでいない。しかし「付随効果」とされる部分には、やはり首を傾げたくなる項目が含まれている。

 

たとえば、大会開催によって「スポーツ関連支出」が増加するとしている。これは「五輪に触発された支出増加」のことで、人々がスポーツ用品を買ったり、スポーツジムに行くようになるといったものだ。

しかし、いかに「付随的」な効果とはいえ、この項目はあまりに細かくないだろうか。ロンドン大会後の動向を参考に割り出した数字のようだが、実際オリンピックに触発されて、スポーツジムに通いはじめる人が何人いるというのだろう?

〔PHOTO〕gettyimages

「ドリーム効果」とは何か

もうひとつ、森記念財団都市戦略研究所が2014年1月に発表したリポートを見てみよう。この試算では、東京オリンピックに約19.4兆円の経済波及効果があるとしている。

しかし内訳を見ると、首を傾げる大きな項目がある。「ドリーム効果」だ。

リポートによれば「ドリーム効果」とは、「社会全体で華やかな喜ばしい出来事が起きたとき、だれもが気分が高揚して、つい財布のヒモが緩み、様々な消費行動が拡大する」ことを指すという。例として、1964年の東京オリンピックのときにテレビが爆発的に売れたことをあげている。

この「ドリーム効果」が2020年大会では約7兆5000億円にのぼるという。実に試算額全体の3分の1以上だ。

リポートには、予測の詳細な根拠は書かれていない。だがいずれにせよ、社会の気分やムードの効果を金額に置き換えることは非常にむずかしいはずだ。その金額が試算額の3分の1以上を占めるこの予測は、いささか大胆すぎないだろうか。