東京オリンピック「経済効果予測」のオカシさを暴こう

「7兆~32兆円」の根拠ってなんだ?
森田 浩之 プロフィール

「3兆円→32兆円」のカラクリ

まず、開催都市である東京都の予測を見てみよう。東京都では今年3月、2020年大会が約32兆円の経済効果を生むという試算を発表した。

東京都はまだ大会招致段階だった2012年に、2020年大会の経済効果を約3兆円とする試算を発表していた。今年の試算は、その10倍以上に膨らんでいる。いったいなぜ?

答えは「レガシー」だ。

今年発表した試算は、大会開催の直接投資や支出で生じる「直接的効果」に、大会後のレガシー(遺産)から生じる「レガシー効果」を加えている。

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「レガシー効果」とは何か。東京都のリポートは、3つの項目に分けて説明している。

1つめは「新規恒久施設・選手村の後利用」や「東京のまちづくり」にからむもの。交通インフラ整備やバリアフリー対策の促進に関係する経済活動も含むほか、「水素社会の実現」も例にあげられている。

2つめは「文化・教育・多様性」に関係するもの。スポーツ人口の増加や障害者スポーツの振興、ボランティアの増加などが、ここに含まれる。

3つめは「経済の活性化・最先端技術の活用」。内容は「観光需要の拡大」から「ロボット産業の拡大」まで幅広い。この項目の経済効果の規模は「レガシー効果」のなかで最も大きく、3項目全体の約75%を占めている。

 

この3項目の「レガシー効果」を含めて、2013年(招致が決まった年)から2030年(大会10年後)までの経済効果が合計で約32兆3000億円になるという。このうち施設整備費や大会運営費などの「直接的効果」は約5兆2000億円だが、「レガシー効果」はその5倍を超える約27兆1000億円と圧倒的に多い。

しかし「レガシー効果」にあげられているものの多くは、経済波及効果としてはあまりに間接的すぎないか。

たとえば「水素社会の実現」は、オリンピックを開くことがどれだけ後押しするものなのか。「バリアフリー対策」は、オリンピック・パラリンピックを開かなければ進まないものなのか。「ボランティア活動者の増加」も金額に換算されているが、その理屈もよくわからない。