「易きに流れる」集団になり下がった地銀・信金・信組よ、目を覚ませ

旧来のビジネスモデルはいまや四面楚歌
多胡 秀人 プロフィール

統合合併で何とかなるのか

今年に入って地銀の再編がいくつも取り沙汰されている。

経営統合や合併の記者会見で、理由として挙げられるのはたいてい「人口減少と地元経済環境の厳しさ」だが、それは何もいまになって始まったことではない。プロダクトアウト型の収益性が急激に悪化したため、統合合併によって収益性の低さをスケールメリットで補うとともに、効率化を進めて乗り切るしかない、との経営判断が働いたのだろう。

地盤とする地域がそれなりの経済規模を持ち、ある程度の人口や事業者数がある場合 (たとえば首都圏、京阪神、中京地区)には 、統合合併によるスケールメリットと効率化によって、当面収益を確保できるかもしれない。

しかし、統合合併を決着させるのに長い時間と機会コストを費やしていては、それすらおぼつかない。スケールメリットと効率化の成果が出てくるころには、おそらくいま以上に金融商品の世界を席巻しているであろう人工知能やフィンテックの軍門に下ることとなるだろう。統合合併に費やした時間と努力が水の泡、という悲惨な事態も容易に想像できる。

『半沢直樹』の時代はとっくの昔に

一方、「顧客本位の金融機関」では、取り組みの成果が出てきている。

マイナス金利政策下で実質的に初めての決算となった2017年3月期、顧客本位の金融機関の貸出金利は、自己中心の金融機関ほど大きな落ち込みを見せなかった。顧客本位のリレーションシップバンキングは、単発・属人的な取り組みにとどまるうちは結果は出ないが、組織的・継続的なものになれば間違いなく成果となって現れるのだ。

この組織的・継続的な取り組みの障害となるのは、プロダクトアウト型のビジネスモデルを推進する「業績評価」や「人事制度」である。

プロダクトアウト型で量を追求する自己中心の金融機関では、厳しい販売ノルマに追われる職員たちが、顧客への後ろめたさと焦燥感とに苛まれ、早期退職が急増している。それに対し、業績評価の方法とそれに連動する人事制度を根本から見直した顧客本位の金融機関では、現場(とくに若手)が息を吹き返している。

今後、金融機関のディスクロージャーの対象となるコンテンツは大きく変わる。地域顧客との対話の重要性は、いままで以上に増すだろう。顧客の側も、顧客本位の金融機関と自己中心の金融機関とを判別する目利き力を高めていくことになる。そうした金融リテラシーを獲得してもらうために、中小企業経営者を対象にした支援の取り組みも始まっている。

あなたの銀行は「顧客本位の金融機関」なのか、それとも「自己中心の金融機関」か。それを判定するのは、あくまで地域の顧客なのである。金融行政では決してない。

金融行政方針にも、顧客本位の金融機関か、自己中心の金融機関かを最終的に評価するのは金融庁ではなく地域顧客であり、金融行政の役割はそのための体制整備・可視化だと明確に記載されている。金融庁はあくまでも黒子であると宣言しているのだ。

検査マニュアル片手に「分類するわよ!」と東京中央銀行に乗り込んでくる黒崎検査官の姿は、もはや本当にドラマの世界の出来事でしかなくなった。「金融庁は味方らしい」と話す冒頭の中小企業経営者の見方こそが、現実なのである。

にもかかわらず、我が国の多くを占める「自己本位の金融機関」は、レンタルビデオ店ではすでに「旧作」に分類される『半沢直樹』の世界から、いまだに抜け出せないでいる。