「易きに流れる」集団になり下がった地銀・信金・信組よ、目を覚ませ

旧来のビジネスモデルはいまや四面楚歌
多胡 秀人 プロフィール

金融機関の成長より地域経済の成長

こういう状況のもとで、金融庁・森信親長官による地域金融改革が始まった。
 
2015年9月に金融庁が発表した金融行政方針を見たとき、私は思わず震えた。金融行政のポイントが、「金融機関自身の持続と成長」から「金融機関による地域企業・地域経済の持続的成長と国民の厚生の増大」へと、大きくシフトしていたからだ。

森信親・金融庁長官講演する森信親・金融庁長官 photo by gettyimages

金融機関の仕事は、顧客とのあいだに確固たる信頼関係を築き、顧客の実態やニーズを深く正しく把握することが土台になる。顧客が法人であれば、事業性評価ということになる。

その上で、法人に対しては事業価値拡大のための支援を、個人に対しては豊かな生活を作り上げるための相談に乗り、支援をすることが求められる。そのためには、金融機関が持つ地域屈指の人材と情報のネットワークを最大限に活用する必要がある。

そのような姿勢を貫けば、金融取引は自ずとついてくる。金利競争に必要以上に巻き込まれることもない。顧客と金融機関がWin-Winの関係になるからだ。

かつて付随業務と見られていた金融機関のコンサル機能 (本業支援や生活設計のサポート) は格上げされ、いまや資金仲介(預金・貸出)と並ぶ両輪として位置づけられている。これこそが真の意味での「リレーションシップバンキング」なのである。

そして、いま地域金融機関に求められているのは、このリレーションシップバンキングに収斂される「顧客本位のビジネスモデル」への真摯な対応である。

現状を率直に言うと、「顧客本位」に積極的に取り組んでいる金融機関(「顧客本位の金融機関」)と、軽視している金融機関(「自己中心の金融機関」)とに完全に二極化している。さらに言うなら、遺憾ながら後者の方が大多数である。

 

四面楚歌の旧型ビジネスモデル

自己中心の金融機関は、優良企業への低金利融資に熱心な一方で、業績不振の企業や新規創業者(=担保がない)には手のひらを返したように冷たく対応している。財務内容が悪化すれば貸付の回収に走り、手間のかかる事業再生は避けて通る。

自己中心の金融機関は、プロダクトアウト型(=作り売る側の理論を優先して商品やサービスを提供するやり方)で、量(を売ること)の追求が“得意技”だ。しかし、プロダクトアウト型の最たるものである優良企業向けの融資や住宅ローンは、過当競争で貸出金利が急降下。さらにマイナス金利がとどめとなり、もはや収益を生み出す業務ではなくなっている。

多重債務者問題を受けた総量規制を見据えれば、消費者ローンの拡大にも限界がある。過熱気味のアパートローンも、供給過多が将来に大きな禍根を残しそうだ。投資信託や保険は、マイナス金利のため商品設計に支障を来し、売れるものが底をついている状況だ。

さらに高リスクの金融商品については、これからフィデューシャリー・デューティにもとづいて当局の強い規制がはたらくだろう。そのあたりの事情は、ベストセラーの続編『捨てられる銀行2 非産運用』(橋本卓典、講談社現代新書)に詳しい。

プロダクトアウト型のビジネスモデルは、いままさに”四面楚歌”なのである。