タイ「性転換手術ツアー」最新事情〜本当の性を生きたい人たちへ

アレを作るのに400万円…!?
石井 光太 プロフィール

では、実際に性転換手術にはいくらくらいかかるものなのだろうか。

「性転換手術と言っても、いろんな形態があるんです。どこをどうするかによって、価格はかなり異なります。たとえば、男性が女性になる場合、うちが手がけているのは2百万円からですね。

病院によっても患者さんによっても、多少の違いが出てくるのです。何日間入院するかによっても違いますし、小さな乳房をつけるのか、大きな乳房をつけるのかによっても値段はちがってくる。手術前に、本人に細かく選んでもらい、それが価格にも反映していくことになります」

タイには病院も無数にあり、安いところであれば数十万単位で請け負っているところもあるらしい。だが、横須賀さんは自身の判断で、最低限のラインとして200万円以上でできるところを勧めているらしい。

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「一方、女性から男性へ性転換する場合は、乳房を切除するのが36万円からです。子宮と卵巣の除去は同時に行われるのが普通です。こちらは、25万円から」

乳房、子宮、卵巣を取れば、次に行うのはペニスの構築だ。

「ペニスには大きく2種類あるんです。小さなペニスと大きなペニス。安いのは、陰核を掘り起こすようにして加工してつくるもの。これだと144万円から。ただ、陰核の加工には限界がありますのでサイズは小さくなる。

一方、高いのが大きなペニス。こちらは、足などの筋肉を移植してペニスに加工する。サイズはかなり自由になりますが、価格は396万円からと高額です」

患者が満足できる性転換手術を受けられるかどうかは、医師の技術によるところが大きい。当然、手術をした回数が多ければ多いほど、手術の技術は上がる傾向にある。日本でも性転換手術を受けることはできるが、歴史的にも、手術の数にしても、そして手術のバリエーションにしても、タイの方が上回っている。そうしたことから、タイでの手術を選ぶ人が多いそうだ。

女性が男性になるケースが増えている

かつては性転換手術といえば、男性から女性になることが多いイメージだった。だが、最近は女性が男性になるケースが増えているという。

「手術件数自体は、MtF(男性→女性)がまだ多いですね。うちですと、全体の7割です。でも、FtM(女性→男性)も増えてきて3割くらいになります。

特徴的なのは、FtM(女性→男性)の場合は若いうちに手術を受けること。学生のうちに受けて男性として社会に出ようとする人が多い。一方で、MtFは男性として定年くらいまで生きて、リタイアしてから『本当の性で残りの人生を生きたい』と言って手術を受ける人が多いことです」

 

今の日本社会では、まだまだ男性として生きた方がメリットはあるということだろうか。

ただ、『世界の産声に耳を澄ます』の取材を通して感じたのは、こうして性転換した人々がパートナーをつくった後、代理出産や養子縁組によって、子供を持ち、家庭を築こうとする姿だった。

医療ツーリズムが盛んになり、性転換手術が増えれば、やがてそうしたカップルの子育てという新たな現実が日本でもより広がっていくのかもしれない。

※金額等は同書取材当時のもの。

先住民族、代理母出産、HIV感染者、アルビノ、内戦地……過酷な環境の中でも、日々、生まれる新たな生命を見つめるルポルタージュ。