いつまでも消えないタバコ「7つの神話」の真実を明かそう

タバコはリラックスできる、も間違い
原田 隆之 プロフィール

「禁煙とはタバコを我慢することで達成するものである」という神話

最後に、喫煙者にとってプラスになることも書いておきたい。禁煙を達成するのは確かに大変である。しかし、これもまた科学の恩恵によって、以前よりははるかに確実に禁煙が可能になってきている。

禁煙においてまず念頭に置くべきは、それはつらくて厳しい我慢によって達成するものではないということである。ニコチン依存になっているのは、大脳辺縁系と呼ばれる脳の比較的奥の部分で、本能にも近いようなところである。

一方、我慢や理性を司るのは前頭前野と呼ばれる人間特有の部分である。この2つが喧嘩をしても、たいていの場合は大脳辺縁系が勝ってしまう。依存症の克服が難しいのはこのためである。

したがって、ここは前頭前野にがむしゃらに頑張ってもらうのではなく、ちょっとしたスキルを使って大脳辺縁系に「喫煙スイッチ」を入れないように工夫する。禁煙外来で禁煙補助薬を処方してもらうのもよい方法である。この薬は、脳内のニコチン受容体を「占拠」して、タバコを吸っても満足感が得られないようにするような役割を果たす。

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それに加えて、身の回りから「喫煙スイッチ」を押してしまうものを遠ざけ、吸いたいという気持ちを未然に防ぐのも効果的な方法である。

例えば、喫煙道具を捨て、しばらくは酒席を断り、その時間を使ってジムに通ったり、運動したりする。あるいは、あらかじめ手首に輪ゴムをつけておいて、吸いたい気持ちになったらすぐに、「輪ゴムパッチン」をして、気持ちをほかに向けるなどの方法もある。

このような、「禁煙スキル」をまとめて構造化して実施するのが認知行動療法と呼ばれる治療法であるが、その治療成績を見ると、1年後の禁煙率が約30%であるとされており、禁煙補助薬とほぼ同等の効果である。

30%というと大して大きな数字ではないと思われるだろうが、現時点ではこれ以上の治療法はない。禁煙がいかに難しいかということだ。

しかし、1度の失敗であきらめず、2度3度と繰り返しトライし続けることが重要で、それにつれて治療成績は確実に上がっていく。一般に、禁煙に成功するまでには数回の失敗(再喫煙)があると言われている。

認知行動療法の具体的なノウハウは、拙著『認知行動療法・禁煙ワークブック』にまとめてあるので、参照していただきたい。

受動喫煙をめぐる魑魅魍魎

受動喫煙の害は疑いようもない事実であり、それはわれわれの健康や生命を脅かす重大な害である。わが国の受動喫煙対策は、世界でも最低レベルだと言われているにもかかわらず、政府はそれを規制できないままである。

先の国会会期中の論議のなかでも、「がん患者は働かなくていい」「私がタバコを吸っても、家族は誰も文句を言わない」「タバコ大好きな私としては法案が通らないほうがよい」などという妄言が国会議員のなかから次々と出てきた。

国民の健康や生命を守ることに関心のないこのような国会議員の名前と顔をはっきりと覚えておきたい。都議選でも受動喫煙は1つのテーマになるだろう。今後の議論の行方を注視したい。