いつまでも消えないタバコ「7つの神話」の真実を明かそう

タバコはリラックスできる、も間違い
原田 隆之 プロフィール

「タバコを吸うとリラックスできる」という神話

山頂で喫煙する人もそうだが、仕事の合間の休憩時間や食事時間、仕事終わりの飲酒時などに、リラックスするために喫煙するという人は多い。紫煙をくゆらせ、大きく息を吐くとリラックスできると彼らは感じている。

非喫煙者にとっては、食事時にタバコの煙が漂ってくると、せっかくの食事が台無しになるし、それは酒席であっても同じである。

喫煙者にタバコをやめたくない理由を聞くと、「リラックスできるから」という理由が一番多い。

リラックスできる方法はいくらでもあるし、事実タバコを吸わない者はいろいろな方法でリラックスしているのに、喫煙者にとっては喫煙が一番のリラックス法であり、それ以外の方法が思いつかない人が多い。

そして、タバコという「リラックスの万能薬」を取り上げられられてしまうことに恐怖心すら抱くようになる。

しかし、ニコチンは中枢神経刺激剤であって、むしろリラックス効果とは逆の作用を持つ。

 

喫煙後には血中のコルチゾールというホルモンの濃度が上昇するが、コルチゾールは別名ストレスホルモンとも呼ばれ、身体がストレスを感じているときに分泌される。

つまり、生理学的に体はストレス状態にあるにもかかわらず、本人は主観的に「リラックスできている」というパラドックスが生じている。これはなぜだろう。

答えは簡単である。喫煙は単に、ニコチンの離脱症状(禁断症状)を緩和しているにすぎないからだ。

仕事中など、しばらくタバコを吸っていないと、ニコチン離脱症状が出現する。それがイライラや集中困難などの不快症状である。そして、喫煙所に行って一服すると、そうした離脱症状が緩和され、主観的には「リラックス」できたと感じるだけなのである。

実際は、マイナスがゼロに戻っただけにすぎず、何もリラックスはできていない。

それどころか、血管は収縮し、心拍は高まり、消化は抑制されるなど、身体的にはニコチンによる生理学的ストレス状態に置かれている。喫煙とは、金を払ってストレスを吸い込む行為にほかならない。

「タバコはやめようと思ったらいつでもやめられる」という神話

何年もの間1日に何十本も吸っていたヘビースモーカーが、禁煙外来も頼らず、自力でスッパリ禁煙できたという「逸話」をよく耳にする。もちろんこうした例はあるだろうが、逸話というのはデータではなく、エビデンスにはならない。

似たような逸話には、「うちのおじいちゃんは、ヘビースモーカーだったが80歳まで長生きした」などというものもある。

それはそれで結構だが、その人に当てはまったことが、自分にも当てはまるとは限らないし、そのような「極端な例外」を一般化するのは、われわれが陥りやすい代表的な認知のゆがみであり、「過度の一般化」と呼ばれる。

宝くじに当たった人の逸話を聞いて、自分もせっせと同じ店で買うというのも同様で、宝くじの当選確率は、飛行機事故に遭う確率よりもはるかに低いという「事実」を無視している。

上に挙げた逸話に関する事実はこうだ。

例外か偶然 ⇒ どこかのヘビースモーカーが自力でやめることができた
事   実 ⇒ 自力で1年間禁煙できる確率は、多く見積もって5%

例外か偶然 ⇒ ヘビースモーカーが80歳まで長生きできた
事   実 ⇒ 喫煙者の平均寿命は約10年短い

つまり、事実は残酷で、やめようと思ってもタバコは自力ではやめられず、吸い続けていると10年早死にする。

結論としては、一度吸い始めると、やめるのはきわめて困難であり、吸わないのが一番正解である。

このように言ってしまうと、喫煙者にとっては救いがなさすぎるので、もし吸ってしまっているなら、できるだけ早く(吸い続けるほど依存の程度が重くなる)禁煙外来など、専門家に頼って禁煙をすることだ。

この先のいつかではなくて、「今」が一番よいやめどきということは間違いない。