直木賞作家・恩田陸さんが作った「マジで怖い」絵本

不謹慎ですがトラウマになってほしい
恩田 陸 プロフィール

怖いものは悪いもの?

絵が出来上がってくるのは、これまでにない楽しみな時間だった。挿絵とは根本的に異なる、文字通りの共同作業である。テキストにどんな絵がついてくるのか、想像もつかない。初めてラフスケッチを見た時は、「へえー、こんなふうになるんだ。なるほど、この人はこういう解釈をしたんだ」という新鮮な驚きと喜びがあった。

その過程、その驚きと喜びが忘れがたくて、もう一度、あの時同時にできた『おともだち できた?』で、ぜひあの体験をしてみたい、と思うようになった。

そこで絵本作りにノウハウと長い実績を持つ講談社さんにプレゼンをして(送りつけたと言ってもいいが)、お願いして実現したのが今回の絵本である。いやあ、今回も、ラフスケッチの出来上がりを待つ楽しみ、仕上がってきた絵を見た時の驚きといったら。堪能させていただきました。

しかも、怖い。かなり、マジで怖いです。

 

実は、『かがみのなか』を作った時、世の中には「怖いものを子供に見せないで」「怖いものはよくない」という動きがあると聞いてびっくりした。確かに、私もつのだじろうや楳図かずおの漫画はトラウマになっている。しかし、「怖いものはよくない」というのは話が別だと思う。

世の中には、避けては通れぬ恐ろしいものがいっぱいある。それはいくら大人が隠していたって、いずれは向かい合わなければならないものだ。「怖いもの」は、危険察知能力を磨き、この先どんなことが起きうるか、その時どうすればいいのか、を考えるきっかけを与えてくれる貴重な機会なのだから、闇雲に排することはかえって「よくない」と思う。

ともあれ、『おともだち できた?』は確かに怖い。お話作家としては、誰かのトラウマになってほしい――と思うのは、やはり不謹慎だろうか。

かがみのなか
おともだち、できた?

読書人の雑誌「本」2017年7月号より