世界の覇者「チンギス・カン」の謎を、考古学で解き明かす

名付けて「チンギスカン・考古学」
白石 典之

考古学が解き明かしたチンギス像には、豪華絢爛、金銀財宝のかけらなど微塵もない。むしろ、寒冷・乾燥という厳しい環境に耐え、わずかな資源を有効利用する質素倹約、質実剛健の姿だった。また、鉄器製作には先進技術が導入されていた。彼はモンゴル高原に新たな産業を興そうとしていたようだ。

侵略戦争に明け暮れたチンギスの目は、けっして外ばかりを見ていたわけではなく、じつは彼の心のベクトルは、つねにモンゴル高原に向いていた。そこに暮らすモンゴルの民の繁栄を何よりも願う統治者だった。彼の国造りのヴィジョンは「モンゴリア・ファースト」、つまりモンゴル第一主義だった。

だからといって排他的ではなかった。彼は異民族や異文化に寛容で、人と物の往来を自由にした。その国造りには学ぶべき点が多い。

「チンギス・カン考古学」は道半ばだが、着実に歩みを進めている。いままでの成果はこのたび上梓した拙著『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る』(講談社選書メチエ)に記した。フィールドワークに基づく臨場感あふれる、斬新なチンギス・カン像を描くことができたと自負している。

モンゴル帝国誕生

読書人の雑誌「本」2017年7月号より