世の中には「おっぱいの揺れ」を研究している人がいた…

おもしろすぎる「ヘンな論文」たち
サンキュータツオ プロフィール

ネタバレだけは許せない!

もちろん、ヘンな論文は理系の研究にもたくさん存在します。

いま話題の人工知能の棋士だって、10年前は「一風変わった研究」だと思われていましたからね。

「情報処理学会」という最先端の工学の学会にも、過去の論文にはこういうものがありました。

これはTwitterとかで、その日あったスポーツの結果を知りたくなかったという人たちがいっぱいいて、それをどうやって防止するかということを必死こいて考えた論文です。

 

『はじめに』で「ネタバレは由々しき問題」だと述べていて超面白い。意外に個人的な想いがキッカケなんだなと思うと、親近感もわきますよね。

『ネタバレ』という言葉をちゃんと論文のタイトルに入れるというところもすごいです。これだって、もうちょっと堅苦しい人だったら『ネタバレ』という言葉を変換してしまう。“結果事前告知におけるなんとか~”のように。

ですが、これを読んでもらいたい人に届けるために『ネタバレ』という言葉をあえてそのまま使っているところが「だれのために書いているか」も意識されていて、理系の論文はターゲットが明確で興味深いです。

湯たんぽを追いかけ続けてキャリアの最後の10年を「湯たんぽの形態成立とその変化に関する考察」に費やした先生や、旧近鉄ファンがどこの球団を応援するようになったかスタジアムに行って調査するという、近鉄ファンがやったとしか思えない論文。

また、針灸の先生が、「針灸を広めるために、世間の針灸の認知度を計りたい!」ということで、ひたすらマンガを読み漁って針灸が出てくるシーンだけを収集するとか、常軌を逸しているとか思えない「情熱」がほとばしっているのもヘンな論文。

「プロ野球選手と結婚するためにはどうしたらいいのか」ということを真剣に考えて論文にまで仕上げた女子大生もいれば、「走れメロスはホントはどれくらいのスピードで走っていたのか」を算出した中学生、「鰻屋の秘伝のタレは継ぎ足してるけど、創業時のタレっていつまでもつものなのか」を計算した中学生など、市井の研究者たちの論文だっておもしろい。

だから論文ハンターはやめられないのです。「知りたい」という欲求は、だれにも止められないです。情熱を知るだけで興奮できるじゃないですか。

「大変すぎて憧れないけど、すごい!」と思える人たちの生き方に触れてたいから、僕は論文を読んでいます。