日本の経営者の報酬は欧米に比べて少なすぎるとしばしば言われる。確かに年間10億円以上を稼ぐ欧米のCEO(最高経営責任者)に比べれば少ないが、年に1億円以上の報酬を手にする経営者は着実に増えている。
東京商工リサーチの昨年の調査では211社で414人が1億円以上の報酬を得ていた。創業経営者ばかりでなく、サラリーマン社長でも年俸1億円を稼ぐのが夢ではない時代になった。社長の手腕で会社に利益をもたらしたなら、堂々と報酬を得ればよい、というのは資本主義社会なら当たり前と言えよう。
だからといって、世の中が納得しなければ、後ろ指をさされることになる。
フランスの自動車大手であるルノーが6月15日にパリ市内で開いた株主総会では、今年もカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)の高額報酬問題が大きな話題になった。総会で審議されたゴーン氏の2016年の報酬はストックオプション(自社株購入権)などを含めて、約700万ユーロ(約8億6000万円)。この金額に対して株主に賛否が問われたが、何と賛成が53%しか集まらず、ギリギリで過半数を超えた。
実はゴーン氏の報酬は昨年も総会で大きな話題になった。何と、賛成票よりも反対票の方が多かったのである。フランスのこの投票制度には拘束力がなく、原案のまま支払うこともできる。だが、昨年の場合、世の中の批判を浴びたゴーン氏はボーナスを減額する対応を見せ、批判をかわした。
特にルノーの場合、2013年以降、大幅な人員削減を行ってきた。その一方で経営トップが高額報酬を得ていることにフランス国民が強く反発したのだ。賛成票がギリギリになっている背景には、議決権の2割を持つ筆頭株主のフランス政府が反対票を投じたためだと報じられている。フランス政府は企業経営者の高額報酬に対して否定的だ。