沖縄で「暴走族のパシリ」になる

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打越 正行 プロフィール

職質で助けてもらう

そんなことを繰り返していると、たまたまある晩、性格の悪い若い警官にあたった。

いつものように、「免許提示は警察手帳を見せてからだ」と強気に出ると、「そんなこと言ってたら、(警察に)連れていくよ」と出てきた。

いつもと違う様子だが後には引けない。

「おかしいだろ!」私もだんだんと語気が強くなる。

わけもわからず、パトカーに乗せられ連行させられそうになった時、以前に取材したことのある少年らが、「打越、なんでもめてんだ?」と声をかけてくれた。

「こいつ(若い警官)が取調室に連れていくとか言うから、そんなことはできないはずだって言ってもめてるんですよ。何とかなんないですかね」

私はそのなかのひとりの少年にコンビニの裏に連れて行かれ、「おまえ酒でも飲んでんのか」、「酒も飲んでないし、免許も持ってますし、スピード違反もしてないっすよ」、「だったらいいじゃないか、見せて終われ」と言われた。

彼はその警官に、「こいつ、打越っていって変なないちゃーだけど悪い奴じゃないから」と説明してくれた。私も彼が言うんだったらしょうがないという態度で免許証をみせて、その場はおさまった。

 

しーじゃー(先輩)とうっとぅ(後輩)の関係

暴走族の若者にとって、警察に対応することは、圧倒的に力がある相手との交渉である。そしてそれは沖縄の暴走族、ヤンキーの若者がまず身に着けるべき大事な能力であることも、後の建築業での参与観察でわかってきた。

建築現場では、うちなーぐちでいう、しーじゃー(先輩)とうっとぅ(後輩)の厳しい関係がある。そしてそこで後輩たちによる、先輩の機嫌をとる言葉かけや、先輩たちの無理難題を抑える手順は、彼らが覚えなくてはならない必須事項(サバイバル)である。

たとえば、彼女と遊んでいる時に先輩から飲みに行く誘いの電話がきたとする。後輩たちは先輩たちに合流したい気持ちを伝えたうえで、今すぐには移動できないことを伝え、「あとから、まわってきましょうね」といって、いったん電話を切る。

これを数回繰り返すことで、先輩の機嫌を損ねることなく、誘いを断ることができる。「まわってきましょうね」という言葉が絶妙である。

その言葉には、はっきりと断るのではなく、自分は合流しようと思っており、ただ自分もまた移動中であるため想定外のことも起るかもしれないので、結果として行けなくても仕方がないという相互の認識があるからだ。

ゴーパチで警察との対応をうまく切り抜けることができたのは、彼らが圧倒的に力のある先輩のもとで交渉しながら生きていたためであった。

この先輩と後輩の関係は、本土の中学校の上下関係とは少し異なる。沖縄の暴走族、ヤンキーの先輩と後輩の関係は、その後の建築業でも使えるスキルで、仕事だけではなく生活面でも適用されるものである。

建築現場では先輩の班で後輩たちはなんでもいうことをきくパシリとなり、それが10代だけでは終わらない。またその関係は、仕事だけに限らない。

先輩のバイクのメンテナンスを頼まれれば、ホイール磨きやエンジンの乗せ換えまでを代行するのがあたりまえだった(沖縄のバイク屋がもうからない要因のひとつではないだろうか)。

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