2017.06.21

驚くことに、住宅ローン完済までの平均期間はわずか14年だった

住宅ローンを極める②
山下 和之 プロフィール

繰り上げ返済で残り期間を短縮する

返済中の住宅ローン、毎月返済額だけではなく元金を繰り上げ返済していけば、返済した金額以上の効果がある。それは、残りの返済期間を大幅に短くすることができることだ。

たとえば、3000万円、金利1%、25年返済でローンを組むと毎月の返済額は11万3061円だが、3年後、36回返済時に毎月返済分以外に約220万円繰り上げ返済すると、その220万円はすべて元金に充当される。この場合、37回目から61回目までの24回分、つまり2年分の元金に相当する。約220万円の繰り上げ返済によって、残りの返済期間を2年間短縮できることになる。25年返済でスタートし、3年後に2年間短縮できれば、その時点で残り返済期間は20年に縮まる。

こうした繰り上げ返済を繰り返していけば、25年の返済期間を14年間に短縮することも不可能ではない。いや、実際に多くの人がそれを可能にしているわけだ。

自分には繰り上げ返済する経済的余裕はないと思うかも知れないが、そうだろうか。2年間で220万円といえば、月々9万円強の貯蓄が必要で、11万円台の住宅ローン返済を続けながらでは、かなり厳しいかもしれないが、700万円から800万円以上の年収があれば、頑張れば不可能ではないだろう。もちろん、これは家計収入だから、共働きなら奥さんの収入も合算した数字。これなら意外にイケるのではないだろうか。

債務超過状態はいずれ解消できる

それでも、負債が多くなるのは家計破たんにつながりかねない――とローンを組むことに対して慎重な人もいるだろう。

しかし、図表2をご覧いただきたい。これは、総務省統計局が毎年実施している一般家庭の貯蓄や負債に関する調査結果をグラフ化したもの。平均すると、1世帯当たり1820万円の貯蓄があり、負債は507万円という結果だった。貯蓄という資産が債務を上回る、“資産超過”のたいへん健全な状態だが、これは年齢によって大きく異なる。

図表2 世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高と負債保有世帯の割合

40歳未満だけでみると、貯蓄は574万円に減る一方、負債は1098万円に増える。負債が資産の2倍近くに達する“債務超過”状態だ。これが長く続けば当然のことながら、家計の経営破たんということになるが、日本人の勤勉さはそれを許さない。40歳代になると、資産は1065万円に増え、反対に負債は1047万円に減少する。わずかとはいえ”資産超過”に回復し、50歳代では貯蓄が1802万円で負債が591万円と健全経営になり、60歳代以降は負債が限りなく減少し、企業経営でいえば無借金経営に近づく。

負債の9割以上は住宅ローン

このように40歳未満で負債が多いのは、住宅ローンによるものであるのはいうまでもない。図表3にあるように、全体では507万円の負債のうち452万円は「土地・住宅のための負債」であり、勤労者世帯だけに限れば、781万円の負債のうち716万円が「土地・住宅のための負債」になっている。勤労者世帯では9割以上が住宅ローンという計算だ。

図表3 負債の種類別現在高

しかし、負債が住宅ローンだけなら若いうちに多少のリスクは背負っても、怖がらずに住宅ローンを組み、頑張って繰り上げ返済など進め、先にも見たようにできるだけ早く返済を終えることによって、老後の無借金経営が可能になる。40歳でローンを組んでも50歳代の半ばで返済を終了し、その後は貯蓄を増やすことに励むことができるわけだ。

しかし、住宅ローンを怖がってマイホームを取得しておかないと、50歳代以降もいつまでも高い家賃の支払いが続く。図表2にあるような形で資産を増やすことはできず、老後がたいへん心配になる。

大都市部でそれなりの設備が揃い、安全に住まうことができる賃貸住宅を見つけようとすれば、10万円程度は覚悟しなければならないだろう。でも、年金生活でその負担はかなり厳しいのではないだろうか。

住宅ローンは決して小さな負債ではない。そのことのリスクを意識することは重要だが、あまりに慎重になりすぎることで却って未来を不幸にしたのでは意味がない。大切なのはいかにリスクをマネジメントするか。思い切る時は思い切ることが、実は将来のリスクを減らすこともよく理解して欲しい。

年金が頼れない時代だからこそ

周知のように公的年金はあまりあてにできない。高齢化がいっそう進んで、それを支える現役世代が減少する一方だから、年金支給額は減少していかざるを得ない。現在の30歳代、40歳代の人たちが年金支給の対象になるころには、現在より2割、3割と減っているだろう。場合によっては、半減ということもあり得るかもしれない。

生命保険文化センターによると、現在でも老後生活に対しては、「非常に不安を感じる」「不安を感じる」「少し不安を感じる」の合計が85.7%に達している。その要因を聞くと、83.7%の人が、「公的年金だけでは不十分」としている。

現在でも、図表4にあるように、年金だけでは生活できないと思っている人が80.0%もいるだから、この割合が限りなく100%に近づいていくであろうことは必至。そんななか、いかに豊かな老後を迎えるかを考えたときに、その基盤になるのが資産としてのマイホームということではないだろうか。

ローン返済を早く終えておけば、老後は家賃の心配はいらないし、住まいを担保として年金的に融資を受ける「リバースモーゲージ」で生活費の不足分を確保する道もある。さらに、介護が必要になったときには、売却して有料老人ホームやサービス付き高齢者向けなどの高齢者向け住宅に入ることも可能だろう。老後の生活の選択肢が増えて、希望に近い生活を送ることができるわけだ。

図表4 老後の生活は公的年金でまかなえると思うか

それもこれも、若いうちに 住宅ローンを組んでマイホームを取得しておいてこそ可能になる。行き当たりバッタリの計画での取得は蛮勇だが、身の丈に合った住宅、無理のない資金計画の実行は、勇気ある決断といっていいだろう。

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