「若い女性の8割が消える」地方自治体のゾッとする未来

さて、対策はあるのだろうか…
河合 雅司, 石破茂 プロフィール

自治体よりも集落が残ることが大事

河合 それから地方創生を考える時、「地方とは何なのか?」という議論が抜け落ちているように感じます。地方創生の「地方」というのは地方自治体のことなのか、あるいは人々の暮らすコミュニティのことなのか。ここがかなり曖昧なまま議論が行われている気がしてなりません。

地方創生とは、単に自治体を生き残らせるための方策であってはならないと私は思います。そうではなく、地域ごとの多様性によって国家の豊かさが織りなされているという事実を、もう一度見直す作業なのではないか。

それを考えるとき、いま地方の統治のあり方が揺らいでいるという問題に突き当たるんです。たとえば人口わずか400人の高知県大川村では、議員のなり手がおらず、村議会が成り立たない状況に直面し、「町村総会」による直接民主制が検討されています。

また衆議院の新区割りを見ると、既存の自治体をいくつかに分割しているところが100ヵ所以上出てきている。2050年には現在の居住地域の約20%が「誰も住まない土地」になるんです。

人口が減り、高齢者が増えて、人の移動がますますしづらい状況で、日本はどういう国を目指すべきなのでしょうか。

 

石破 おっしゃるように、既存の自治体がこのまま成り立つ必要はありませんが、統治の仕組みは必要です。ただそれは自治体をそのまま残すという意味ではなくて、コミュニティが残るという意味です。自治体を分解するとたくさんの集落になります。この集落が残っていくことが大切なのです。

島根県立大学の藤原眞砂教授の研究によれば、集落が生き残るためには年間1%の人が帰ってくればいいそうです。1%というのは、そんなに難しいことではないでしょう。

その一方で、地方では、東京や大阪に出ていった人がいま何をしているのか、という追跡調査をほとんどしていない。都会で県人会に入っている人もごくわずかです。

出ていった人のその後を把握していれば、「帰ってこないか?」とUターンを促せる。都会に出ていく高校卒業時までに、自分たちの町の実態を知り、誇りを持てるような取り組みをやっていたら、帰郷する人も出てくると思うんですね。

河合 人口が減っていく社会では、従来以上にコミュニティを機能させていかなければならないわけですが、そこで発想の切り替えが必要になってくると思うのです。

日本は否応なしに縮んでいく。拡張路線でやってきた成功モデルを見直すべきです。でも、どうせ縮むんだったら戦略的に縮もうじゃないかという発想が必要。たとえば、「24時間社会」からの脱却や非居住エリアの明確化なども一つの選択肢ですが、石破さんは、どこから手を着けたらいいと思われますか。

石破 私が地方創生担当大臣の時には、「コンパクトシティ」と「小さな拠点」(コンパクトビレッジ)をそれぞれの自治体で考えてくださいとお願いをしましたが、やはりここから始めるべきじゃないでしょうかね。

高度成長期、都市部への人口集中に対応するため、山を切り開き農地を転用してニュータウンをたくさんつくりました。いまそれがゴーストタウンに変わりつつあって、維持するのは極めて難しいと思います。人が減っても道路や下水道は必要。採算の合わない公共インフラに投資を続けるのは困難です。ならば、コンパクトシティを目指さなくてはならない。

ニーズの乏しい住宅地は、いっそのこと「山林原野に戻す」という選択もあると思います。財政が破綻するだけだから、無理して大きな規模を維持しても仕方がない。

もう一つのコンパクトビレッジのほうは、中山間地の集落に対応するため、複数の集落に必要な診療所や保育所、商店やガソリンスタンドを集約しようというものです。憲法で保障された居住・移転の自由を制限することなく、中山間地の集落の維持を効率化しようという発想です。

河合 なるほど。人口減少の議論は現状への対応だけで解決するものではないので、次の世代、さらに次の世代へとつないで議論していかなければならないテーマです。中学生、高校生にこそ、この問題を真剣に考えていってもらいたい。

石破 実際、先ほど紹介した佐川町や、地方創生のモデルの一つとされる海士町(島根県)など活性化している地域では中高生の声を町づくりに反映させる取り組みが行われている。

「東京に行って出世する」というサクセスストーリーはもう古いです。地方に住んで、地元の特長を生かした町づくりに参加していったほうが豊かで幸せな人生を送れる、という事実に気づいてもらう―人口減少時代に地方が生き残るカギは、そこにあると思います。

日本列島創生論

読書人の雑誌「本」2017年7月号より