「若い女性の8割が消える」地方自治体のゾッとする未来

さて、対策はあるのだろうか…
河合 雅司, 石破茂 プロフィール

石破 私は週に3~4ヵ所ほど地方に出かけて、話をする機会があるのですが、そのときには「この町はね……」となるべく個別具体的な話をするように心がけています。

どこに行っても最初は、「この町の人口は、2100年には○○人まで減るんだよ」と話します。するとちょっと驚いてくれるんだけど、すぐに「でもいいか……総人口の2割くらい減っても」なんていう反応になるんですね。

そこで、「総人口は2割しか減らないかもしれない。でも20代、30代の若い女性は8割減るからね」と言うと、さすがにギョッとするんです。子供を産んでくれる女性が8割も減ったら、町が成り立ちませんからね。ここまで説明していかないと、なかなか危機感を共有してもらえないんです。

 

河合 私が最近危惧しているのは、「AI(人工知能)やロボット技術が人口減少に伴う労働力不足を解決する」という論調です。この分野の技術革新をどんどん進め、大いに活用しなければならないのはもちろんですが、「AIやロボットで人口問題が解決する」というのは、楽観的すぎる。

石破 そう。AIやロボットが、労働力の面で人間を代替してくれることはあり得ないことじゃない。ただ注意しなければならないのは、ロボットやAIは税金を払ってくれないということ。ロボット1台に“ロボット税”をかける時代でも来ない限り、税収面でちっともプラスにはならない。

※写真はイメージです(Photo by iStock)

また、AIやロボットはモノを食べないし買わない。つまり、いくら仕事をしても消費しない。人間がしてきた労働をAIやロボットが代替していくと、国の財政や消費経済がどう影響を受けるかは未知数なのです。

いずれ、多くの仕事はAIやロボットに代替されるかもしれませんが、そのぶん新たなサービスを生まねばならない。私たちが子供の頃に熱中した『鉄腕アトム』では、「ロボットを追い出せ! 仕事を奪ったロボットを破壊しろ!」なんて、人間がロボットに敵意をむき出しにするシーンがありましたが、もうそれがマンガの世界じゃなくなりつつある。

東京への人口移動を食い止めよ

河合 石破さんは地方創生担当大臣の頃から、「地方にこそ希望がある」と主張してこられた。近著『日本列島創生論―地方は国家の希望なり』(新潮新書)でもその主張を展開されていますが、拙著でも、「2040年までには全国の自治体の半数近くが消滅を避けられない状況になる」と書きました。改めて、なぜ地方に人口問題や少子高齢問題を解くカギがあると考えるのでしょうか。

石破 これについても出生率から考えてみましょう。都道府県で見れば(合計特殊)出生率が一番高いのは沖縄で、島根、宮崎、鳥取、熊本と続きます。一方、出生率最低は東京で、京都、北海道、宮城と続く。出生率は西日本、南日本が高いのです。

また、基本的に地方のほうが出生率は高いのですが、所得が高いわけではない。一番所得の多い東京の出生率が最も低く、一番所得が少ない沖縄が最も高いんですね。

では、出生率の高さは何と相関関係があるのか。この謎を探っていくと、どうやら一番相関係数が高いのは、平均帰宅時間と通勤時間なんです。東京や神奈川みたいに、往復1時間半も電車やバスに乗っていると自由に使える時間が減るので、子供をつくる機会も少なくなってしまうわけです。

河合 なるほど。まず、何が出生率に影響しているのかをもっと精緻に分析するべきだということですね。

石破 そうすると、まず何よりも、出生率の高い地方から出生率の低い東京に人が移る現象を食い止めることが、人口減少を緩和させる一つの決め手じゃないかと思います。

先日、真庭市(岡山県)の太田市長から「わが市の出生率が2.0を超えました!」とのお話を聞きました。真庭市は中山間地の町で、もともと林業が盛ん。その特長を生かし、CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)という高層建築も可能な木材の生産で、日本を代表する会社があります。

こういう将来性のある事業所を抱える地域では、若者が定着して出生率も上昇する。都会から離れていても、地方の努力によって出生率は間違いなく上がるんです。

河合 地方では最近、小学生や中学生に、「大学進学で東京に出ていくのは仕方がないが、卒業したら帰って来いよ」と、若者の帰還を促して地域を再生しようと取り組んでいる町が増えていると石破さんはおっしゃっていますね。

 

石破 そう、たとえば宮城県気仙沼市。ここは漁業の町ですが、いま気仙沼の小学生・中学生のうち54%もの子は、「大人になったら気仙沼に帰ってきたい」と言うそうです。

そこで「これは脈がある!」と踏んだ市は、子供たちに漁業を徹底的に学ばせようとしています。気仙沼には遠洋漁業もあれば沿岸漁業、沖合漁業、養殖漁業もある。

さらに造船業や製氷業もあるというように、裾野が非常に広い。地元で働くことの生きがいや誇りを与えることが大事なんですね。

あるいは高知県の佐川町。ここでは町長が、中学生たちに町の総合計画の一部を書かせている。彼らがつくりたい町のプランを聞き、「そうか、じゃあ都会で勉強した後に、その町をつくりに帰って来いよ」と促し始めています。

河合 地方の若者が都会に出てくる一つのきっかけは、もちろん大学進学でしょう。そこでいま地方創生本部が、「東京に新しい大学をつくるな」と叫び始めていて、これが法規制される方向にあるのですが、私はどうも違和感を抱いてしまうんです。

坂本龍馬の例でもわかるように、若者というのは昔から都で勉強するもの。都会でたくさんの刺激を受け、いい仲間と出会う。それも大切な勉強の一つです。

大事なのは、勉強した後に地元に帰る場所があるかどうかじゃないでしょうか。やりがいのあるものが地元になければ、単に東京から大学を締め出しても、若者は地元に定着しません。地元の国立大学を卒業しても就職先は東京や大阪となるんだったら、意味のない対策になってしまいます。

石破 そう、大学は東京にあってもいい。そして地元に戻ってくれればいいんです。

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