出向もできなくなる
今後は、人間にしかできないと思われていた投資に携わる仕事もAIが取って代わる。
米ゴールドマン・サックスは今年に入って、'00年に600人いた株式トレーダーを2人に減らし、AIに置き換えたと明かした。日本の金融機関でも同じことが起こる。

そもそもバブル以降、銀行員は能力が低下していて、失職しても仕方がない人材も多いと、前出の岡内氏は指摘する。
「今の銀行員はお客のニーズに応えるという、銀行本来の努力をしていません。試しに投資信託を勧めてきた行員に、細かい手数料の内訳などを聞くと、途端に凍りついてしまいます。
今後、販売の現場ではAIを駆使して相手に最適な金融商品を提案すると各行は口を揃えます。それは結構なことですが、最終的に人間が必要なくなる。
バブル崩壊以降、銀行は不良債権処理に追われて前向きな仕事をしていない。だから能力が低下したという意見もあります。
しかし、銀行に勤めていた私に言わせれば、不良債権処理ほど勉強になった仕事はありません。税務や法律にも詳しくなったし、修羅場の人間力も身についた。不良債権処理に真剣に取り組んだ者は事業再生を含め、高いスキルを身につけました。
しかし、そういった人材を銀行はきちんと処遇しなかったために、能力が高い人ほど外資系金融機関など、条件がいい職場に流出した。しかも、フィンテックの進展で人材のミスマッチが発生し、時代の流れに適応できない人がますます増えます」
これまではそういった人材を融資先や系列企業に天下りのように押し込むことができた。だが、銀行は融資額を減らし、株式の持ち合いも解消しており、これまでのように行内でダブついたベテラン行員に職をあてがうことはもはや不可能だ。
「世の中、人手不足といっても、中高年で求人があるのは、コンビニの店員や警備員、介護など限られた分野です。しかし、これまで銀行員としてエリート然としてきた人ほど、そうした仕事に就くことを嫌がる。
ある銀行の人事部員が言っていました。AIでお客に最適な投資信託を選ぶのもいいが、行内の余剰人員に対して、『あなたの現在価値はいくらです』と提示するのに活用してほしい。
面と向かって人事に言われると腹も立つが、AIに言われれば仕方がないと思って辞めてくれるのではないか、と」(岡内氏)
銀行員「大失職時代」は目前に迫っている。
「週刊現代」2017年6月24日号より
