地政学の「古典」を読めば、国際関係のいまが一発で分かる

佐藤優の地政学で読む世界史【前編】
佐藤 優 プロフィール

アルフレッド大王(八四九~八九九年)やウィリアム征服王(一〇二七~八七年)が行なった諸戦争は、少なからず英国国内の対立にもとづくものであって、これにヴァイキングの一族が外から介入したものにほかならない。それで英国が言葉の本当の意味において島国といえるようになったのは、やっとエリザベス一世の時代になってからである。

それまではずっとスコットランドとの敵対関係に悩まされていたために、隣りあわせの大陸との関係において、真に統一のとれた国家としてふるまうことができなかった。アメリカは今日すでに内部的な対立を解消した立派な国家である。が、同時に島国でもある。

それを彼らは、これまで新大陸といってきた。だが、歴史のあゆみは、別に本当の大陸が同じ地球上にあることを、やがて彼らにも悟らせずにはおかないだろう〉

世界は、世界島という大陸国家群と米国、オーストラリアなどの海洋国家との対立になるとマッキンダーは考える。

 

〈いま世界地図を開いて、一九一八年の戦闘の経過をふりかえってみよう。すると、今回の戦争が、ほかならぬ島国人(Islanders)と大陸人(Continentals)のあいだの戦争であったことがわかる。この事実には、もはや一点のうたがいもいれない。

戦争は大陸で戦われた。しかも、その主戦場は、フランスの半島部の内陸側の前線だった。その一方の陣営は、英国、カナダ、アメリカ合衆国、ブラジル、豪州、ニュージーランド、それに日本などで、これらはことごとく島国である〉

大陸国家であるロシアや中国と海洋国家である米国と日本の対立には地政学的な必然性があるのだ。

ちなみにマッキンダーは、世界島の覇権を獲得するためには、ロシアと西ヨーロッパの間にある中東欧地域を支配しなくてはならないと考えている。現在、ウクライナをめぐってロシアと欧米は、世界島の覇権獲得戦を展開しているのだ。本書を精読すると世界の「今」がわかる。

マッキンダーの地政学

週刊現代』2017年6月24日号より