楽天がAmazonに勝てない理由は「物流哲学の差」にあった

割引している場合じゃない
加谷 珪一 プロフィール

なるほど、この仕組みが…

楽天は2015年の第3四半期から楽天市場単体での流通総額を公表しなくなった。上場企業が開示をやめる時というのは、当該事業が順調ではないというケースがほとんどである。

2016年度に楽天が取り扱ったEC流通総額は約3兆円と前年比で12%増えたが、この数字は楽天トラベルにおけるホテル予約なども含めた数字であり、以前、開示していたECサイトの流通総額とは異なる。楽天市場単体の流通総額の伸びはもう少し小さいと考えた方がいいだろう。

 

一方、アマゾンの日本国内における売上高は約1兆2000億円で2015年と比較すると20%以上も拡大している。アマゾンは、一部でマーケット・プレイスなど自社以外の出店者の商品も扱っているが、楽天とは異なり、自社で仕入れた商品を中心に販売を行っている。

楽天のビジネスモデルは、楽天市場という場所を貸し出すことで出店者から料金を徴収するというものなので、あくまで販売主体は出店者側にある。

この仕組みこそが、楽天が一気に業容を拡大できた理由だが、すべてを自社で取り仕切るアマゾンとの差がここまで縮まっているというのは、楽天にとってはかなりの脅威となるはずだ。

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アマゾンはここ1~2年で斬新なサービスを次々と繰り出している。2015年に開始したプライムナウは、年会費3900円のプライム会員を対象に、アプリを通じて注文した商品を1時間以内に配送するという即時サービスである(1回あたり2500円以上の注文が条件で890円の配送料が必要。2時間以内でよければ配送料は無料)。

2016年には自社で直接販売しないマーケット・プレイスの商品についても「お急ぎ便」で受け取ることができる新サービス「マケプレプライム」を開始した。一定基準を満たした出店者の商品については、アマゾンが取り扱う商品と同様、お急ぎ便の対象となる。

2017年に入るとプライムナウのサービスを拡充し、三越日本橋本店、マツモトキヨシなどの商品も即時配達サービスの対象にした。また同じタイミングで、野菜や果物、鮮魚など生鮮食料品を配送する「アマゾンフレッシュ」もスタートさせている。

10万点近くの食料品や日用品を最短4時間で自宅に届けてくれるというもので、プライムナウと同様、アマゾンフレッシュについても、アマゾンの自社配送網を使ってサービスを提供する。

アマゾンからの取り扱いを増やしたヤマト運輸が荷物をさばき切れなくなり、アマゾンに対して値上げ交渉を行うという事態になっているが、これもウラを返せば、アマゾンが便利なサービスを次々と打ち出し、利用者数と利用頻度を増大させたからにほかならない。

アマゾンがサービス・レベルにおいて楽天を大きく引き離すことができた理由は2つある。ひとつは物流に対する考え方の違いであり、もうひとつはビジネスモデルそのものの違いである。