財務省は、新発国債の入札から発行までにかかる「決済期間」について、入札の「翌営業日」にそろえる方針だ。
国債などの有価証券の取引には、約定日(売買した日)と決済日(資金と証券を実際に受け渡しする日)がある。日本の市場では、決済期間が10日以上かかる月もあり、投資家からは急激な価格下落などのリスクがあると指摘されていた。
'18年5月より実施されるこの短縮化は市場の要望を汲んだものとされているが、これまで「スピード発行」が達成されなかったのはなぜなのか。
証券や国債の翌営業日決済は、業界用語で「T+1決済」といわれている。Tとは約定日(Trade Date)の頭文字で、約定日プラス1日で国債の決済と発行が行われることを意味する。
国債取引額が大きいアメリカ、イギリスでは、以前から「T+1決済」で、今回の短縮化は大国に足並みをそろえるという目的もあるのだろう。
新規国債の決済短縮化を報じたのは'17年5月31日付の日経新聞だが、既発の国債売買については、すでに'15年6月に「翌営業日」とすることが決定している。実はこの時点で、新規の国債発行についても決済が翌日になるのは確定的だった。
だから筆者としては、なぜ今頃になってすでに既定路線だった話が報道されたのか興味深い。
報道の内容を見ると、「決済期間を短縮して金融機関のリスクを軽減させる」とある。これはその通りだ。だがその後に、「将来、日銀が国債の買い入れを減らしても、国債発行に支障が出ないようにする必要がある」と続き、財務省が「国債の安定発行の体制を強化する」とある。
つまり、今回の決済期間の短縮が「国債の安定発行」の一環であるかのように読み取れる。