5月18日、東京・虎ノ門の旧テレビ東京本社にて、「ガイアの夜明け」放送開始15周年を祝うパーティーが盛大に行われた。番組の歴代制作スタッフ、同番組の案内人を務める江口洋介さん、ナレーターの杉本哲太さんらが集い、あちこちで番組の思い出話に花を咲かせていた。
02年4月に放送開始となったこの番組。当初は視聴率2~3%台が続き、打ち切りの話もしばしばあったという。それが、いまやドキュメンタリー番組の代名詞というべき番組に成長したのだから、新旧の制作陣の感慨もひとしおというものだろう。
2010年より番組の案内人を務める俳優の江口洋介さんは、現代ビジネスの取材に対し、
「日本の経済活動の裏側には、これほど濃厚なドラマがあるのだということを、この番組を通じて学んでいます。『ガイアの夜明け』を見た人は、必ずどこかのシーンで感動し、勇気づけられ、いま自分が直面している困難に立ち向かう元気を得るはずです。そして、その翌日からまた気持ちを新たにして、一生懸命働く。この番組が、実は日本経済の原動力になっているんじゃないか、と感じることがよくあります」
と、この番組の魅力を語る。
15年という節目を迎えてなお安定的な人気を誇る『ガイアの夜明け』(テレビ東京系・火曜夜10時)。だが、制作陣は、番組はまだ進化の途中だと考えている。チーフ・プロデューサーを務める久保井恵一氏が、これまで番組が歩んできた道と、これからの番組が目指すものについて語ってくれた。
私がこの番組に携わるようになったのは4年ほど前からです。放送開始当初のことを直接知っているわけではないのですが、確かに、視聴率で苦戦していた時期もありました。当時は知名度も低かったため、企業に取材依頼を出しても、『どんな番組かよく分からないので、協力できない』と断られることも多かったそうです。
制作陣も、経済という事象を、映像を通じてどう伝えればいいのか、四苦八苦していたようです。題材やテーマが面白いのは分かっていながら、その見せ方がなかなか掴めなかった。少しずつ少しずつマイナーチェンジを施しながら、経済活動のなかにある「人間ドラマ」を描く方法を身に着けていったのです。
そこで生み出された「技術」は、いまの制作陣にも引き継がれています。たとえばある企業を取材するときに、経営者のインタビューを番組のなかに入れたいと考えたとします。その場合、社長室で三脚にカメラを載せて話を聞くのではなく、仕事の合間に突然質問をぶつけてみたり、社長が現場に向かっている時に話を聞いたりすると、本音が出てきやすい。
かしこまった空間でインタビューを行うと、「取り繕われた言葉」で話しがちですが、後者のようなタイミングで話を聞くと、感情のこもった「生の言葉」が聞かれるのです。
また、実体の掴みづらい経済現象を「可視化し身近にする」ために、番組の導入を一般家庭からスタートさせることが多くあります。例えば、苦境に立つ地方銀行や地方スーパーがテーマの場合、利用客のご家庭からドキュメンタリーが始まる…あるいは非正規雇用の問題であれば、当事者の自宅での生活から番組が始まる…そして徐々にシーンを展開して、その日のテーマに近づいていきます。
こうした「川下から川上に遡る」手法は、今では当たり前になっていますが、番組開始当初から様々な試行錯誤を重ねながら、「ガイアの夜明け」は〝経済ドキュメンタリー〟という新ジャンルを確立していったのです。
いまや弊社でも長寿番組の一つとなった「ガイアの夜明け」ですが、私たち制作陣は常に新しいことに取り組んでいくことを心がけています。老舗といわれる企業やブランドでも、その地位に安住していれば、たちまち足元から崩れ落ちてしまうケースをガイアでも取り上げてきましたが、それは、テレビ番組でも同じです。
ここで、15年の歩みを振り返りながら、「ガイアの夜明け」の課題と未来、についてお話させていただきたいと思います。