JR上野駅「痴漢転落死」は超一流ホテルの支配人だった

遺族と同僚が語る「無念」
週刊現代 プロフィール

二人は口論となり、一緒に上野駅で下車した。痴漢行為を断固否定する岡田さんはホーム上から離れようとしたが、近くにいた別の利用客に取り押さえられ、駅員に引き渡されてしまう。

岡田さんは駅事務所内に連れて行かれたが、駅員の目を盗んで再び逃走した。

「駅構内を疾走していた男性はワイシャツにチノパン姿のきちんとした身なりでしたが、顔面蒼白で手ぶら、しかも途中で脱げたのか、靴も履いていませんでした。改札を突破して、赤信号の横断歩道を渡り、繁華街のほうに消えていきました」(当日、駅を利用していた目撃者)

 

その時、ビルの屋上で……

岡田さんは繁華街の路地に入ると、6階建ての雑居ビルの外階段を全力で駆け上がった。

「駅員と女性が男性を追いかけて繁華街に入っていきましたよ。それから、ほとんど時間を置かずに、警察官も走っていきました。パラパラとでしたが、総勢10人以上はいたと思います」(別の目撃者)

屋上まで上った岡田さんは、手すりを乗り越えて、同じ高さの隣のビルの屋上に飛び移る。そこには空調設備の機器がいくつも設置され、隠れることも考えたかもしれない。眼下の路上には警察官が集まり始めていた。いつ隣のビルの外階段を上ってくるかわからない状況で、もう引き返すという選択肢はなかった。

反対側にあるのは高いビルのみ。もう飛び移ることは不可能だった。だが、ここに隠れていても、見つからない保証はない。

深夜で、しかも人通りが少ない静かな路地だったゆえに、おそらく、自身を探す警察官の声や階段を上がる音が岡田さんにも聞こえていたことだろう。

「パニックになった岡田さんはビルとビルの約80cmほどのすき間を、両手両足を広げて地上まで降りようとしたのかもしれません。あるいはすべてに絶望して、自ら身を投げたのか、そのどちらかしか考えられません」(全国紙社会部記者)

午前1時頃、雑居ビルの関係者はドサッという大きな物音を聞いた。

駆けつけた警察官は、ビルのすき間に倒れていた岡田さんを発見する。搬送先の東大病院で、岡田さんの死亡が確認された。事故死か自殺か、どちらなのかは現在も不明のままである。

そもそも、もし仮に「手に触れる」という行為があったとしても、それが痴漢になるのか。

痴漢行為の線引きについて、元検事で痴漢事件に詳しい弁護士の中村勉氏はこう指摘する。

「電車内で手を触っただけでは、痴漢はなかなか成立しにくいと思われます。痴漢は、公衆の面前で性的羞恥心を生じさせるというのが、行為の構成要件です。

ですから通常であれば、胸や臀部、太ももを触った場合ということになるでしょう。手を触るという行為だけでは、強制わいせつにもあたらないと思います。

ただし、手の触り方にもよります。単に握手するような触り方だったのか、それとも手を撫で回すような感じの触り方なのか。痴漢であるか否かは、性的に恥ずかしい思いをさせたかどうかがポイントです。

もちろん普通に手に触れただけでは、痴漢行為にはあたらないでしょう。ちなみに手を握ったのであれば、刑法上の暴行罪にあたります」