さて、保護者との侃々諤々の議論の結果、43回目となるはずだった智弁学園の韓国修学旅行は、「同意書の集まり具合が、4月に延期を決めたときよりも悪かった」(智弁学園・片山教頭)ことなどから今年は行われないことが決まった。関係者によると、積極的に参加する意思を示した生徒の数は、全体の一割程度だったのではないかという。
結局、学校側は今年の修学旅行先を韓国から北海道へと変更することを決定し、6月3日までに、3校の生徒たちと保護者にその旨を通知したのである。
今回の変更決定について智弁学園高校の教頭は、「現代ビジネス」の取材に、「4月に延期を決めてから国際情勢が好転することを期待していたが、好転する兆しがなかなか見えないため、保護者にはそのようにお知らせした」と述べている。
同学園では原則全員参加の修学旅行としては行わないものの、代替措置として希望者のみ、3校の合計で50名程度の生徒を韓国に送る「海外研修プログラム」を今年度に実施する計画があるという。
伝統や教育理念を重視したいという学校側の気持ちも分からなくはない。保護者側の反応も「過剰」とも映るかもしれないが、これについても、実際にその立場になってみないと分からないところがあるだろう。
保護者の一人はこう明かす。
「学園の理念は『三位一体』。学校側、生徒、保護者が一体となって、子どもたちの成長を促す、というものですが、今回の件では学園側の前のめりな姿勢が目立ち、理念からずれているのではないかと感じました。決断が遅れたこと、二転三転したことが、生徒や保護者に余計な不安を与えたんだということは、学校側にも理解していただきたいのです」
国家間の緊張・対立が、思わぬところの緊張・対立を生んでしまったこの一件。せめて、保護者と学校側の「分断」が早く修復されることを願うのみだ。