赤ちゃんは生まれる前からママのもとに「来たい」と強く願っている

ルポ「胎内記憶」の不思議【前編】
川内 有緒 プロフィール

唯一無二の瞬間

不思議なのはその後だった。

夫・公朗さんの帰宅後、この不思議な体験をシェアしようと、もう一度動画を再生した。

「そうしたら、今度はなんの感慨もなくって、『あ、お医者さんいっぱいきてるねー!』『ひゃひゃひゃ! お父さんひげもじゃだねー』とか言って、笑ってましたね。当事者ではなくて、すっかり観察者の目線でした」
 
どうやら、あれは唯一無二の瞬間だったらしいのだ。
 
そんな凛太郎君も、もう小学2年生。今や、あの日のこともすでに忘れてしまった。それでも千佳子さんにとって、「自分にとっては、あの日のことは大きなできごとだった」と言う。

「出産の時、自分ひとりで頑張ってたんじゃなくて、一緒になって痛みをこらえてたんだなあと感じました。自分が産んだと思っていたけれど、本当は“本人の意思”で生まれてきたんですね。あの時、私たちのもとに『来たい』って、強く、強く願ってくれたから出会えたんだなあと思うようになりました」

強く願ったから出会えたという言葉は、その他の胎内記憶の話ともピタリと一致する。

 

胎内記憶には、千佳子さんが体験したような「誕生記憶」の他に、「中間生記憶」というものがある。お腹の中に命が宿る以前の記憶のことで、そこでは、まさにどうやって赤ちゃんが自分の意思に基づいて両親を選んだのかが語られるのだ。

ここまでいくと、いわゆる「スピリチュアル」な領域に入るわけが、こういった生まれる前の記憶に関する証言も、実はそう珍しいものではない。
 
残りの2つのエピソードは、ちょっとファンタジックで、でもリアリティがある「中間生記憶」の物語である。

後編に続く

チャンスを摑んだのは31歳の時。2年前に応募した国連から突然書類審査に合格との知らせが舞い込んだ。2000倍の倍率を勝ち抜き、いざパリへ。世界一のお役所のガチガチな官僚機構とカオスな組織運営にビックリしながら、世界中から集まる野性味あふれる愉快な同僚達と、個性的な生き方をする友人らに囲まれて過ごした5年半の痛快パリ滞在記。
川内有緒(かわうち・ありお)ノンフィクション作家。2010年に国連職員から作家に転身。『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)で第33回新田次郎文学賞を受賞。近著に、散骨をめぐる生と死、その後を描いた『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社)がある。一児の母。 

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