●後編はこちら: https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51952
畏怖にも似た感激
いま2歳半になる娘がいる。
ある晩、私は実家の母と、知り合いの出産の話をしていた。少し離れた場所で遊んでいる娘(ナナ)を横目で見ながら、「Aさんは、外出中に突然破水しちゃってすごく困ったんだって」と言った時のことだった。
娘がおもちゃを放り出し、ダダッと飛んできたと思いきや、「ナナねー、ママのお腹から出てきたんだ!」と私の膝の上に勢いよくダイブした。
えっ、なんの話?
キョトンとしているとこう続けた。
「ナナねー、ママのお腹にこうやって入ってた! ほら、こうやって」
と、うつ伏せになると、小さな体を思いきり丸め、床にうずくまった。
どうやら、自分が生まれた時の話をしているらしい。実演してくれたその姿は、お腹の中にいる胎児そっくりだ。
お腹の中のことを覚えてるの? と聞くと、娘は「うん!」と得意げに頷いた。
その瞬間、畏怖にも似た感激を覚えた。
もしかしたら「破水」という言葉が引き金になったのかもしれない。娘は破水から始まった出産で生まれた赤ちゃんだった。
「ねえ、ママのお腹の中はどうだった?」と聞いてみると、娘はニコっとして「あったかかった!」と答えてくれた。
33%の子どもが「胎内記憶」がある
一部の子どもたちは、出産や妊娠中の記憶、いわゆる「胎内記憶」を持っていることは知っていた。映画『うまれる』(豪田トモ監督作品)、『かみさまとのやくそく』(荻久保則男監督作品)には、そんな子どもたちが数多く登場する。
胎内記憶は決して珍しいものではなく、実は100 年以上も前から世界中で報告されてきたそうだ。胎内記憶という概念を日本で広めた産婦人科医の池川明氏が行った調査では、実に33%の子どもが「胎内記憶がある」と答えたそうである(青春文庫『子どもはあなたに大切なことを伝えるためにうまれてきた』より)。
とはいえ、自分の娘がその33%に入っていたことは、やはり驚きだった。
他の人の話も聞いてみたくなり、SNSで広く呼びかけると、何人かが話を聞かせてくれた。そのエピソードの多くが、「お父さん、お母さんの声が聞こえてきた」「お腹の中は、赤くて狭くて、早く出たかった」「お腹のおへその線から栄養をもらってた」「お腹の中ででんぐり返しをしていた」という驚くべき話だった。
中でも、特に印象に残った3つの物語を紹介したい。