魅惑の「最強古生物」電車1両サイズのナマコが鋭い歯でガブリ! 

面白いのは恐竜だけじゃない
土屋 健 プロフィール

強いのか、弱いのか

「生態系の強者」とされる古生物には、その宿命として「実は強くなかったのではないか」という指摘がなされるときがある。

その良い例はやはりティラノサウルスで、ティラノサウルスには「狩人説」ではなく「スカベンジャー説」が時折登場し、メディアに取り上げられる。この手の話題、メディアは大好きだ。

同じように、アノマロカリスも「実は弱かった」とする見方は少なくない。代表的なものでは、その口に注目したもので、つくりからみて「硬いものを噛み砕くことはできなかった」とする指摘である。故に強者ではなかった、というわけだ。

 

同時代・同地域に生きていた生物として、三葉虫がよく知られている。三葉虫の殻は炭酸カルシウムでできており、これがとても硬い。アノマロカリスがこれを噛み砕いて食べるためには、よほどの力が必要だったことだろう。

しかし、当時の海にいた動物のすべてが硬いというわけではない。例えば、当時の魚の仲間には「鱗」さえなく、その外皮は、おそらくとても軟らかかった。また、硬い殻をもつ三葉虫は脱皮によって成長する。脱皮直後であれば、殻は軟らかく、おそらくさほどの力を必要とせずに補食することができたにちがいない。

こうした獲物を狙えば、アノマロカリスは、やはり“強者”として、存在できたはずである。

一方、アノマロカリスは眼が良かったことも指摘されている。高速で泳ぎ回る獲物を捕捉することができたらしい。これは狩人としては優れていたことを示唆している。

アノマロカリスの生態に関する議論が進む一方で、その体内のつくりはいささか原始的だったことも見えてきた。時代の覇者だからといって、必ずしも最先端の特徴をもっていたというわけではないようだ。

なお、アノマロカリスを含むグループを「アノマロカリス類」と呼び、近年はこのアノマロカリス類の新種も報告されている。