ドゥテルテ大統領の「大誤算」まさかISがこんなにしぶといとは…

戒厳令下の戦闘が終わらない
大塚 智彦 プロフィール

ドゥテルテ大統領も、当初のやや楽観的な見方から事態が膠着状態に陥っている現状に新たな対応を余儀なくされている。6月初旬に予定していた来日もキャンセルせざるを得なくなった。

マラウィ市に国軍の精鋭、海兵隊、特殊部隊を増派するとともに、市内に潜伏中といわれるアブサヤフのイスニロン・ハピロン幹部とマウテグループのマウテ兄弟の確保(生死を問わず)に報奨金を支払うことを明らかにした。

IS壊滅作戦はフィリピン国家としての使命であるとして、反政府イスラム武装組織のMNLF、MILFに加えフィリピン共産党の軍事組織「新人民軍(NPA)」に対してまで、「共にISと戦おう」と共闘を呼びかけた。

「共に戦うなら国軍兵士と同様の給与、待遇、名誉に加えて自宅も用意する」(5月27日ホロ島の陸軍基地での演説)

戒厳令布告を受けて「国軍との戦闘に備えよ」と指令を出しているNPAにまで共闘を呼びかけたのだから、事態の深刻さがうかがえる。

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こうしたなりふり構わないドゥテルテ大統領の姿勢は、切羽詰まった状況に追い込まれた窮余の策ともいえるが、一方でISとの戦いに懸ける並々ならない覚悟の現れとも言えそうだ。

6月5日、ドゥテルテ大統領が布告した戒厳令に対して下院議員6人が「憲法の定める要件を満たしていない」として戒厳令差し止めを求める訴えをフィリピン最高裁に起こした。

憲法では戒厳令布告は「侵略もしくは反乱に当たる事態で、公共の安全維持に必要な場合」と規定されているが、今回の戦闘状態はアブサヤフ幹部の掃討が戦闘のそもそもの発端であり「侵略でも反乱でもない」というのが提訴の理由としている。

 

こうした声や「戒厳令はマルコス時代の人権侵害につながる危険をはらんでいる」との慎重姿勢を求める論調もあるが、国民の多くは依然としてドゥテルテ大統領への高い支持と期待を示している。

それだけにドゥテルテ大統領としては、一刻も早い「戦闘終結」とフィリピンにおける「IS拠点化阻止」の成果を内外に示したいところだろう。