ドゥテルテ大統領の「大誤算」まさかISがこんなにしぶといとは…

戒厳令下の戦闘が終わらない
大塚 智彦 プロフィール

フィリピンで進むISの拠点化

フィリピンのロレンサナ国防相は6月1日、死亡した武装メンバーの中に新たにイエメン、サウジアラビア、チェチェン共和国の出身者が含まれていることを明らかにした。

これまでのようにインドネシアやマレーシアといった近隣国の過激派組織メンバーやIS共鳴者だけでなく、遠く中東などからも戦闘員が加わっていることから、IS本体のメンバーがフィリピンでも活動している可能性が裏付けられたとしている。

アブサヤフとマウテグループは、ミンダナオ島の独立とイスラム国家の樹立、麻薬ビジネスというそれぞれの設立当初の目的から、ISの拠点支配地域である「ウィラーヤ」建設という共通目的で一致、そこへ東南アジアや中東からISシンパ、そしてIS戦士が合流、加勢しているとの現実が浮き彫りになってきた。

シリアやイラクでのISの弱体化により、先鋭的な国際テロ戦略の拠点としてフィリピン南部が選ばれた可能性があるとみられている。

フィリピン南部ミンダナオ島には、同島を主な活動拠点とする反政府イスラム武装組織の「モロ民族解放戦線(MNLF)」とその分派「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」、そしてアブサヤフ、マウテグループの拠点があること、首都マニラから離れ、周囲が海に囲まれた島であり、人の密入国、武器や物資の密輸も容易なこと、そして14世紀にマレー経由で伝わったイスラム教がミンダナオ島からフィリピン各地に伝播したというイスラム教の土壌が残る地であることなど、さまざまな理由が考えられる。

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国際社会の素早い動き

フィリピンのこうした現状にASEANや米国は素早い対応を見せている。

フィリピン国内の反政府活動、政府軍との戦闘という側面からISの拠点作りを阻止する、まさに「テロとの戦い」にフィリピンが直面しているとの共通認識が生まれたことがその要因だ。

6月5日、米トランプ政権はフィリピンに対する武器供与に踏み切った。在フィリピン米大使館はフィリピン海兵隊に対してライフル銃300丁、拳銃200丁、機関銃4丁を供与し、すでにマラウィ市での戦闘に使用されるという。米大使館はその目的を「対テロ戦支援のため」と明言している。

 

さらに翌6日、シンガポールで開催されていたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席していたマレーシアのヒシャムディン国防相は、同月19日からマレーシア、インドネシア、フィリピンの3ヵ国によるミンダナオ島周辺海域での合同海上パトロールの実施を発表した。

マラウィ市での戦闘でインドネシア人やマレーシア人が武装組織に参加していることが確認されたが、空路入国の記録がないことから、マレーシアやインドネシアから海路で密入国した可能性が濃厚なため、特に密入国ルートがあるとされるスールー海周辺での合同監視活動を強化する。さらに20日からは、同じ3ヵ国空軍による上空からの合同哨戒、監視活動も実施されることとなった。

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