ヒトの顔には表情があるのに、魚にはなぜまったく表情がないのか?

解剖学者が真剣に考えた!
山科 正平 プロフィール

特殊な働きをする表情筋

通常、骨格筋というのは一端をある骨に付着させて、他端を別の骨につけている。

両者の骨は関節で連結されているので、筋肉が収縮すると関節をはさんだ骨の運動が発生するというのが事の真相である。

それ故に膝の関節で足が曲がったり伸びたり、つまり、歩行ができるし、また指でものをつかんだり、それを遠くへ投げ捨てるような動作も可能になる。

ヒトのからだにあるほとんど全ての骨格筋は、このような仕組みで運動を行っている。

ところが顔にある表情筋の場合、骨格筋の一群であるから手足の筋と同様に一端は頭部や顔面の骨についているのだが、他端は皮膚に付着させるという違いがある。

そのため、筋肉が収縮するとそれに応じて皮膚が微妙に動くため、喜怒哀楽が表情となって表出されるわけだ。

【PHOTO】iStock

表情筋にはくちびるの周りをリング状に取り囲んで、口唇を閉じるあるいは口をすぼめる働きをする口輪筋、同じようにまぶたの周りにある眼輪筋の他、額にしわを寄せる筋、鼻翼を引き上げたり引き下ろす筋、えくぼを作らせる筋など、大小はいろいろだが解剖学の教科書では20個ほどの筋肉が記載されている。

耳の周りにも耳たぶを前から引く筋、上に吊り上げる筋、後方へ引く筋と3種類あることになっているが、非常に退化してしまっているので、子象のダンボのように耳たぶを扇動できる人は非常に少ないものだ。

しかし、訓練を重ねればこれらの筋肉が復活して耳たぶを動かせるようになるはずだから、他に芸がない人はそんなトレーニングでもすれば宴会の余興にはなるのかもしれない。

 

多くの神経を有する表情筋

さて、骨格筋というもの、身体中には600以上あるといわれるが、背骨の周囲などには分別しがたい筋群が沢山あるので、それらを一々数え上げていくと恐らく600のオーダーではとうてい収まらない数になるはずだ。

しかも個々の骨格筋には大脳皮質にある神経細胞から伸び出た神経線維が下行して、途中にある中継点で神経細胞を変えるものの、神経線維は骨格筋を作るひとつひとつの筋細胞にまで到達している。

そのため、脳から収縮の命令が発せられると、それに呼応して筋肉が収縮するしくみになっている。

【PHOTO】iStock

大脳皮質の運動野という部分には、全身の筋肉の運動を支配する神経細胞が行き先毎にグループになって並んでいる。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/