カルロス・ゴーン氏退任後の日産は「大躍進間違いナシ」

ゴーン・ウォッチャーが解説
国沢 光宏 プロフィール

三菱のクルマが、いい

さて、最後にこれからの日産だが、ゴーンさんが引退したと思われがちだが、ぜんぜんそうじゃない。形式的には一歩引いたように見えるが、社長から大社長になっただけだ。ますますパワーを増して日産・ルノーグループの舵取りをするだろう。

生涯かけて使い切れないほどの財を持つお金持ちなのだが、まだまだ仕事への情熱もメラメラと燃えている。

ゴーンさんはだめな会社を再生させることをライフワークだと思っているような節がある。その意味で、事実上傘下にした三菱自動車が面白くて仕方ないのではないか。

三菱に注力するためにも、日産の社長という肩書きが重荷になった。それが今回の人事の理由だと思う。

既に経営陣の三分の一程度は日産から送り込まれたから、これからはフルに立て直し作戦が始まるだろう。4月の後半にゴーンさんは三菱自動車タイ工場視察している。ゴーンさんが三菱のロゴマーク、スリーダイヤの帽子を被った姿は、なんとも感慨深いものがある。

日産のカルロス・ゴーン氏と三菱自動車の益子修氏日産のカルロス・ゴーン氏と三菱自動車の益子修氏 Photo by GettyImages

おそらく2年もすると三菱自動車のイメージは今とずいぶん違っていると思う。三菱というと死に体と思われがちだがイメージが、悪いのは国内だけで、海外ではまったく印象が違う。

パリ・ダカールやWRCといったモータースポーツイベントで活躍していたことで、特に東南アジアや中東ではタフなクルマメーカーというブランドイメージが定着している。

実際、悪路での使用に耐える車作りには一日の長があり、日本ではあまり人気がないが、「アウトランダーPHV」などすごくいいクルマだ。日産が経営に参加することで、ちゃんとした会社になったということが世間に伝われば、こうしたクルマも売れるようになるはず。

日産同様、三菱にもファンがいる。こんな状況でも三菱のクルマを買う人がゼロではないのがその証拠だが、だからこそ彼らが具体的に行動できる雰囲気を作ることが必要になる。

そして三菱の復活は、日産グループの未来を握っていると言ってもいい。日産が一番苦手としているのは新興国市場なのだが、そこを三菱がカバーすることができるからだ。

ゴーンさんは日産、ルノー、三菱をそれぞれ単体でどうするかではなく、グループ全体としてどうアライアンスを組み、シナジー効果を高め、結果としてグループ全体の販売台数を増やすか。それを考えているはずだ。

三菱を立て直すことが出来れば2000万台グループに入ることが出来る。2000年時点で日産とルノー合わせてもたいしたことはなかったのが、今では三菱も合わせればトヨタ、VWに迫り、GMは抜いている。そう考えてもゴーンさんの業績がいかにすごいかがわかる。

ただ、ゴーンさんも現在62才。いつまでも第一線にいるわけではない。三菱を再生させれば満足して完全に身を引くかもしれない。その後の日産と三菱自動車を誰が舵取りをするのかはわからないけれど、相当難しいことは間違いない。

本当の意味での日産グループにとっての試練は、ゴーンさんが完全引退した時に訪れるのだろう。