60歳を過ぎての「耳かき」は重大な疾患を引き起こす

風呂上がりの綿棒もやめたほうがいい
週刊現代 プロフィール

綿棒を入れるなら1cmだけ

ただの老廃物ではなく、身体に有益な効果をもたらしている耳垢だが、それでもつい耳かきをしたくなるのはなぜなのか。

「耳のなかには、末梢神経のひとつである迷走神経が走っています。実はこの迷走神経を綿棒などで刺激すると、身体は快感を覚えます。だから耳かきは気持ちいいのでクセになってしまうんです」(石井氏)

前出・笠井氏は、特に高齢者は耳かきに対して注意を払う必要があると指摘する。

「高齢者は新陳代謝が悪くなっているので、自浄作用が弱くなっています。身体を動かす機会も減るので、耳垢が奥に入り込めば外に出ていくのも難しくなっていきます。

また特に男性は、加齢で耳毛が太くなり、ますます溜まりがちになる。なかには、家族とのコミュニケーションがうまくいかず、認知症を疑われていた人が、溜まっていた耳垢を取ることで聴力を取り戻して、元気になるケースもあります」

できる限り触らないようにするのが耳の健康のためだが、自浄作用が低下して耳垢が溜まりやすい高齢者や、どうしても耳垢による違和感が拭えない場合は、なんらかの処置が必要になってくる。そのような場合、どうすればいいのか。

「耳垢は『皮脂』に近いものですから、水よりも油のほうが落としやすい。軟膏やベビーオイルなどで細めの綿棒を湿らせ、外耳道の手前から1cm程度の範囲を、拭うようにするくらいで十分です。耳の奥をゴリゴリとこすってカスを出そうとしてはいけません。

頻度としては、月1回でも多いくらいだと思ったほうがいいです。週に1回以上している人は、耳かきのしすぎです」(前出・笠井氏)

ある程度耳垢がある状態が自然で、むやみに掻き出す必要はない――そのように、考えを改める必要がある。

 

「週刊現代」2017年6月10日号より