三菱UFJ銀行頭取「1年で退任」の全内幕

組織はこうして人を潰す
週刊現代 プロフィール

小山田氏の精神を蝕んでいった原因は、これだけではない。平野MUFG社長の拙速な経営判断もまた、小山田氏の肩に重くのしかかっていた。

それが三菱UFJ信託銀行の法人融資事業を三菱東京UFJ銀行に統合する再編案だ。

「これは、あと1年で退任する予定だった平野MUFG社長が自分のレガシー(遺産)として残そうと決めたんだと思います。年明けくらいから小山田頭取以下、この再編にかかりきりになっていましたが、これは1年でできるようなものではありません。大事業ですよ。

信託銀行から法人融資だけを移すといっても、それだけでは収まらない。法人の預金やデリバティブはどうするのか、具体的なところは何も決まっていませんからね。

しかも三菱UFJ信託銀行の側にも有力OBがたくさんいて、彼らから『三菱東京UFJ銀行に俺たちの事業をそこまで渡すわけにはいかない』という圧力が現役にかかっているはずです。その調整は本当に大変だったはずです」(前出・三菱東京UFJ銀行幹部)

平野信行平野信行(MUFG社長)Photo by GettyImages

新頭取の抱える「不安」

OBと金融庁の間で板挟みになり、上司である平野社長からは無理難題を押し付けられる。このほかにも、マイナス金利による収益の低下、銀行カードローンの問題、グローバル展開のさらなる推進、東芝への融資など、難題は山積していた。

重責に耐えかねて、ついに小山田氏の精神が決壊した――。これが「一年で退任」の内幕だ。

だが、頭取が替わったからといって、三菱東京UFJ銀行が直面する状況が変わるわけではない。同行の前途には、依然として課題が山積みだ。

「三毛新頭取は剣道四段という触れ込みですが、実は心臓に不整脈の持病を抱えています。今も薬を常用しているはずですから、激務に耐えられるか心配です。

小山田さんの退任で、結果的に『天皇』になってしまった平野社長が倒れでもしたら、代わりはおらず経営が行き詰まってしまう。

MUFGにはトップになるべき人材が明らかに少ないんです。それはつまり、経営陣を決めるはずの指名・ガバナンス委員会がまったく仕事をしていないということでもあります」(前出・MUFG関係者)

 

前出の有力OBは再びこう嘆いた。

「三菱東京UFJ銀行の頭取は、面白い仕事ではないうえに、激務。やるもんじゃありませんよ。毎日、お客さんと飲まないといけないし、週末はゴルフで本を読む時間もないんですから。2年もやると嫌になります。

しかも、OBへの根回しや再就職先の世話までしないといけないため、心労が絶えない。

仮に三毛新頭取が倒れてしまうと、次から次に人材を潰す平野社長の責任が追及されることになるでしょう。昨年12月には三菱東京UFJ銀行の元常務も自殺していますしね。

『いったいどうなっているんだ』という声が若手役員からは上がっていますが、平野社長には届いていない」

異例の人事は、小山田氏個人の問題ではない。三菱UFJフィナンシャル・グループが抱える構造的な問題が、改めて浮き彫りになった。

「週刊現代」2017年6月10日号より