前川・前事務次官に激怒して、安倍官邸が使った「秘密警察」

彼は長年、マークされていた…!?
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そしてこの事実は、ある可能性も示唆している。

文科省内で「加計学園の件はおかしい」という認識が広がり始めたのと同時期の昨年秋、前川氏は官邸幹部から「警告」を受けた。そして年明けには、天下り斡旋問題が浮上し、スピード辞任に追い込まれた――。前出の自民党ベテランが言う。

「『天下り問題の責任を取らされた前川氏が、官邸を逆恨みして文書を流したのではないか』と見る人もいます。

しかし、本当は順序が逆で、前川氏が加計学園に難癖をつけてくることを見越して、官邸が彼を追い落とすために天下り問題を報じさせたのではないか。どの省庁にも天下りはあるのに、文科省だけがなぜ、と不思議でしたから、そう勘繰りたくもなる」

「官邸のアイヒマン」出動

前川氏は文科事務次官の座を追われ、官僚としては命脈を断たれた。しかしその後、加計スキャンダルの核心を握る人物として、官邸に猛然と逆襲を仕掛けてきた。

「ただの人」となり、失うもののない前川氏を潰すには、「醜聞を出し『前川は信用ならない人間だ』と世間に強く印象付けるしかない」(与党幹部)。

朝日新聞が、文科省の内部文書について第一報を出してすぐ、菅官房長官は官邸に出入りする警察関係幹部と接触した。

内調を統括する内閣情報官で、ユダヤ人虐殺を指揮したナチスの将校になぞらえて「官邸のアイヒマン」とも呼ばれる北村滋氏と、第二次安倍政権発足時、菅氏の官房長官秘書官を務めた中村格警察庁組織犯罪対策部長だ。

「朝日のネタ元は分かってる。マスコミと通じているなんて、看過できないよな」

菅氏は彼らの前でこう呟いたという。前出の与党幹部の証言。

「この二人は、『いま安倍総理に最も近いジャーナリスト』といわれる山口敬之氏が、『週刊新潮』に『準強姦疑惑』を報じられたとき、『揉み消し』を依頼したとされる相手です。

菅長官から『前川潰し』の依頼を受けた彼らが、『出会い系バー通い』の情報を流したと聞いています。

中村氏は菅長官の覚えめでたく、次期警察庁長官の呼び声も高い。エリート中のエリート」

 

安倍政権に不利な内部情報を、マスコミに流す人物。彼に対して、官邸は狙い撃ちで身辺調査をかけた。そして、入手した「下半身情報」を別のマスコミにリーク、社会的抹殺を図った。戦前の特高も真っ青の、日本の「秘密警察」が、一人の男に牙を剥いたのだ。

前川氏は「文書は文科省で作られたものに間違いない」と断言している。しかし官邸と自民党は、かつて自らが任命した文科官僚の「前トップ」の言葉にもかかわらず、決してその信憑性を認めようとせず、野党が求める前川氏の国会参考人招致も拒否し続けている。

菅氏にいたっては「(前川氏は、文科事務次官の)地位に恋々としがみついていた」と、異常な個人攻撃を始める始末。

どんな手を使ってでも、安倍政権を守る――官邸の手段を選ばぬやり口が、白日のもとにさらされつつある。国民も、彼らを選挙で勝たせすぎた副作用、「数の論理」の恐ろしさに気づき始めた。

「週刊現代」2017年6月10日号より