東芝の比じゃない「ウエスティングハウス法的整理」の世界的影響

米当局が出した深刻なレポートの中身とは
中岡 望 プロフィール

技術覇権をめぐる米中確執の火種に

トランプ政権にとって、ウエスティングハウスの破産申請がもたらす直接的な影響は、CRSが指摘するように83億ドルの連邦政府の融資がどうなるかである。もし建設が中止されれば、電力会社は融資を返済しなければならない。エネルギー省の担当者は「関係者が約束を遵守し、納税者を守るために合意に達することを期待する」との声明を出している。

それだけでは済まない。SCANA社のスティーブン・バーン最高経営責任者はトランプ政権の担当者と会談した後、「アメリカ政府はウエスティングハウスが売却されることを懸念している」と、会談の感触を語っている。『ニューヨーク・タイムズ』(4月7日)も、「トランプ政権は東芝が売却を決めたウエスティングハウスを中国の投資家が買収することを懸念している」と報じている。

 

すなわち、最新の原子力発電の技術が中国の手に渡ることになる可能性が生じているのだ。現在、先進国での原子炉建設は低迷しているが、途上国では依然として旺盛な需要がある。中国が最新の技術を手に入れれば、世界のエネルギー政策で中国が圧倒的な影響力を持つことになることも、トランプ政権が中国の動きを牽制する理由である。安全保障上の問題も、より大きな懸念材料であるのは間違いない。

外国企業がアメリカ企業を買収する場合、外国投資委員会の承認が必要となる。大統領が安全保障上の問題があると判断した場合、買収を阻止することができる。一方、中国企業が何年も前から原子炉建設会社を物色していたという情報もある。

リック・ペリー・エネルギー省長官とスティーブン・ムニューチン財務長官は、中国のウエスティングハウス買収に関する議論を行った。そしてトランプ政権は3つの選択肢を検討していると伝えられている。まず、大統領権限で阻止すること。もうひとつは、国内企業あるいは友好的な外国企業に買収を説得すること。3つ目は、オバマ政権がGMを救済した時のように一時的の国有化する案である。

東芝一社でどうこうなるレベルではない

日本ではウエスティングハウスの破産法申請は、東芝の存亡の観点から議論されることが多いが、この問題はもはや国家レベルの利害が絡み合い、複雑な方程式になっており、簡単には解が出る性質のものではなくなっている。

東芝は将来の損失や負担の確定ができないため、前年度の決算をまともに行うことすらできていない。そのことが日本国内で東芝の経営に対する不安と非難の原因となっている。

しかし、その確定のためには、ウエスティングハウスのアメリカ国内のみならず世界各国で工期遅れ、建設コスト予算超過を起こしている事業を、各国の政治リスク、訴訟リスクを勘案したうえで、着地させるという作業が先に必要となる。

それゆえ、今後、まだまだ膨大な時間がかかり、東芝の経営問題のみならず、世界の原子力政策にも大きな波乱が予想されるのである。