東芝の比じゃない「ウエスティングハウス法的整理」の世界的影響

米当局が出した深刻なレポートの中身とは
中岡 望 プロフィール

破産手続きは今どうなっている

どのような再建策が講じられても、ウエスティングハウスの事業は大きく変わるだろう。なんといっても世界最大の原子炉建設会社である。CRSの報告にあるように、アメリカ国内で稼働する原子炉の半分を建設しているうえ、世界各国で原子炉建設大手として膨大な数の事業に関わっている。

しかし、破産裁判所が明らかにした文書では、「ウエスティングハウスの国際事業は危機的な状況に陥る懸念がある」とし、規制当局や顧客から事業継続と資金確保の確認を求められていることを明らかにしている。

 

ウエスティングハウスは、破産申請した段階でアメリカの投資管理事業会社、アポロ・グローバル・マネジメント社の関連会社から8億ドルの破産融資を得ることで合意し、海外子会社への支援とリストラに充当されることになっている。すでに3億5000万ドルの借入を実施、さらに5月23日、破産裁判所は残りの4億5000万ドルの使用許可を承認する判断を下した。

ウエスティングハウスとアポロ・グローバル・マネジメント社が破産裁判所に提出した書類には、同社が生き残るためには海外子会社の健全性を維持することが不可欠だと書かれている。債権者の弁護士は8億ドルの借入は過大であると厳しい見方をしていたが、破産裁判所は、この融資で債権者の不安は和らぐだろうとコメントを出している。

調達資金の半分は、原子炉の燃料供給と維持サービス、廃炉を進める業務を行っている海外の高収益の子会社の運営資金に充当されることになっている。同社が破産申請を行った後、ヨーロッパの子会社は資金調達に苦慮する状況が続いていた。こうした子会社は収益を上げており、同社の将来の事業展開のためにも維持する必要がある。こうした海外の子会社はアメリカの破産法第11条の対象外である。

同時に東芝の弁護士は破産裁判所で、原子炉建設を発注している電力会社の大株主SCANA社との間で債務負担に上限を設ける交渉を行っていることを明らかにした。また、ウエスティングハウスの弁護士は「破産申請後の資金状況と事業活動は安定している。すべての面で順調に進展している」と楽観的な見通しを語っている。ちなみにそこで見積もられている東芝が被る損失は約9億ドルとなっている。

どのような形でウエスティングハウスの再建が図られるかまだ不透明である。問題の4基の原子炉建設の費用負担がどのように決着するかで、状況は大きく変わる。また、同社は生き残りのために海外の子会社の収益に頼るか、場合によっては売却することで再建を進めることも考えられる。

頼みの海外事業も前途多難

現在の世界の原子炉建設需要は非常に大きい。原子力産業の国際的業界団体であるワールド・ニュークリア・アソシエーションの調査(2017年5月)では世界48カ国で447基の原子炉が稼働し、59基が建設中、建設計画は170基、提案されている案件は372基である。特に建設が集中しているのがアジア太平洋諸国と東欧、中東である。

中国では稼働中が36基、建設中が21基、計画中が41基と、圧倒的に多い。インドは稼働中が22基、建設中が5基、計画中が20基とこれも多い。アメリカは稼働中が99基と多いが、建設中は4基に留まっている。計画中は16基ある。

原子力発電の依存度が高いフランスでは稼働中が58基、建設中が1基、計画中はない。イギリスは稼働中が15基、建設中はないが、計画中は11基である。ちなみにお隣の韓国の場合、稼働中は25基、建設中が3基、計画中が8基である。

2014年から19年の間、世界の原子炉建設市場規模の成長率は5.22%になるとみている。福島の原発事故以来、原子炉建設に歯止めがかかった感があるが、それでもこの市場は魅力的な成長市場であることに変わりはない。

その中でウエスティングハウスの占める地位は高い。既述のように、アメリカの稼働中の原子炉の半分は同社が建設したものである。ウエスティングハウスは中国、イギリス、インドでの原子炉建設に携わっておる。ウエスティングハウスの最大の顧客で、最大の成長市場は中国である。中国では、同社設計の最新鋭の原子炉、AP1000型4基の建設を受注している。

ウエスティングハウスは「破産法申請はアメリカ国内の事業のみに適用されるもので、中国での原子炉建設工事に影響を与えない」と繰り返し主張している。また、破産法申請の数時間後に、同社は中国政府の担当者と電話会談を行い、工事継続を確約している。

しかし、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日)によれば、AP1000型原子炉の建設費用はすでに予算を数十億ドル上回っており、必ずしも楽観できる状況ではない。

ウエスティングハウスはインドでも原子炉6基の建設を受注している。ただ、インドの場合、原子炉を売却する契約で、建設工事は請け負っていない。したがって、アメリカ国内のように経費が増えた分を同社が負担する必要はない。

破産申請後、同社の経営幹部はインドに飛び、インド原子力発電公社(NPCIL)の幹部と会談を行っている。2017年半ばまでにインドで原子炉を建設することはオバマ前政権が決めた国家間の約束である。しかし、これも予定通りに完成する見込みはない。

ウエスティングハウスが原子炉建設業務から撤退するとの推測や、子会社を売却するとの報道もあり、同社の動向がこうした国の原子炉建設に留まらず、世界の原子炉建設市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。