「仮想通貨」は通貨ではない、ましてや金融商品ですらない

ビットコイン暴落に巻き込まれないために
宿輪 純一 プロフィール

銀行の置き換えになるか

仮想通貨の基本となっているブロックチェーン(決済取引の元帳となる分散データベースシステム)の技術にも課題がある。ブロックチェーンにおいては、参加者で取引の確認をして取引履歴のブロックを組んでいく。ビットコインでは10分、仮想通貨のひとつであるリップルではほぼ即時ともいわれている。

この参加者が取引を確認するというところに難点がある。たとえば送金(振込)といった銀行等の金融機関の取引の内容を外部の人が見る可能性があるのである。

暗証化されたとしても、銀行の外で確認、そして保管させるのはかなりハードルが高い。そもそも銀行は顧客の取引に対して守秘義務がある。そもそも、誰でも自分の取引が対象の銀行以外に見られるのは嫌ではないか。

 

同じ観点で、ビッグデータとして取引データを外部に展開(販売)することが、できないのである。また、一方、銀行内で確認作業をするのであれば、それはすでにブロックチェーンではない。つまり、現在、日本の金融決済のほとんどを担っている銀行本体のシステムをブロックチェーンにすることは難しいのである。

さらにいうと、振込(送金)や金融取引は、通常、夕刻などに決済インフラにおいて金融機関ごとに取引金額を計算し、差額分を清算する。そのときに、ブロックに組んでいるならば、そのブロックをばらさなければならない。

そのため、決済インフラでは使いにくい。東京証券取引所も米国の証券取引所も通常の売買取引ではブロックチェーンは使わない。私募債の購入、登記簿謄本の取引といったシンプルな取引には使えよう。

それでも銀行が取り組むわけ

そもそもは、仮想通貨は金融制度が遅れている国や、銀行口座を持っていない人が多い国、クレジットカードが普及していない国、即時振込ができない国などでその隙間を埋めるように発展している。

日本の送金(振込)の仕組みは全銀システムという決済インフラで行うがリアルタイムで相手の口座まで届く。しかも、個人だけでなく法人も対象として、145行もの多数の参加者がいる。このような高度な決済システムを持っているほかには国はない。

先日、ワシントン、ニューヨークを訪問し、FRBやその他の当局、米銀を訪問し、仮想通貨をはじめとするフィンテックについても意見交換をしてきた。

実は、フィンテックという言葉は米国東海岸の金融機関では使われていない。西海岸のしかもIT系の方々が使っているようである。米国はフィンテックが進んでいると一般的にいわれているが、米銀の決算をみても、フィンテックが収益の柱にはなっていない。

一般的に、仮想通貨を始めとしたフィンテックへの対応について、銀行をはじめとした金融機関は期待されていることは事実である。その対応には革新的なイメージがあり、株主(株価)対策としても必要である。

まずは、「対応している」ことが必要なのであるが、その実現となると極めて困難である。ブロックチェーンなどの実証実験も何年もやっているが、なかなか実現しないでいる。結局、銀行本体では困難なのである。信用の拠り所が制度全体というのも、日本のようにすでに既存の決済システムが高い信頼を得ている国では、気になる要素である。

しかし、メガバンクは、仮想通貨的な商品の導入をすすめている。MUFGコイン、みずほマネーなどである。三井住友銀行(SMBC)は予定していない。

これらは厳密な意味で、仮想通貨ではない。MUFGコインもみずほマネーも、1円と1コイン・1マネーを同等としている。この点で、法定通貨に対し価格が変動する別な通貨としての仮想通貨ではなく、スマホを活用した利便性が向上した電子マネーという性質をもっている。

実際に、割り勘計算機能などの宣伝をしている。一方、内部の人事制度とリンクさせたりして企業ポイントとしての性質ももっている。つまり、現在、ビットコインが注目され、人気があるのは、その価格の上昇ゆえである。この点、メガバンク系の仮想通貨的な商品は価格が固定されているために、投資商品として人気を博すことはない。

仮想通貨もフィンテックも、金融の発展形態とすると、消費者のためになるのであれば、ドンドン進めるべきである。ただし、あくまでも消費者の保護が最も大事なのである。

また、現在、日本では経済に銀行制度が大きく根付いており、銀行制度から離れて金融の発展もない。現在のフィンテック議論では、既存銀行の新しい業務という視点が主であるが、もし、技術革新による新分野開拓を目指すのであれば、逆にIT企業が銀行業務に参入していく方式として検討するのも一案であろう。