「共謀罪」が成立したら、「海外での日本人接待」が犯罪になる⁉

準備罪法案から「贈賄罪」が消された理由
北島 純 プロフィール

海外での公務員接待が違法になります

もう一つの重要な点は、今回の「共謀罪法案」に、海外で日本の公務員に賄賂を贈ったら贈賄罪に問われることになる、という条文が含まれている点だ。今までは、賄賂を貰った日本の公務員にだけ収賄罪が成立し、賄賂を贈った側に犯罪は成立しなかった。これからは贈賄罪が成立することになる。この事実は、海外ビジネスを手がける日本企業にとって極めて重要であるにもかかわらず、ほとんど知られていない。

日本企業が海外ビジネスを展開するにあたって、進出先の現地日本大使館や領事館に何かと世話になる事も多いだろう。大企業の役員クラスが閣僚や政治家の海外訪問に同行し、政府と一体となってインフラ整備等の巨額案件を売り込む風景も良く見られる。

そうした際に日本の政治家や官僚に対する「慰労会」や「お疲れさま会」と称する接待が繰り広げられることも多いが、今回の法改正で、そうした利益供与は今後、犯罪になる可能性があるのだ。

なぜ「共謀罪」法案で、贈賄罪の国外犯が導入されるのか。実は、廃案となった過去3回の法案でも同様の規定は存在していたが、今回は別の事情もうかがえる。「共謀罪」の対象リストから贈賄罪と外国公務員贈賄罪が消されたことの「埋め合わせ」にもなるという事情だ。

外国公務員贈賄罪は、OECD条約の加盟国が各国の状況を相互監視して報告するシステムがある。2016年6月、そのワーキンググループの座長ドラゴ・コス氏が来日し、「日本は外国公務員への贈賄を規制する法制度に重大な欠陥がある。今回の来日は日本政府に行動を促す最後の手段だ」と強い口調で批判した。これを受けて萩生田光一官房副長官は会見で「立法の整備の必要があるのではないかという指摘は受けたと承知している」と回答したが、今回の「共謀罪法案」はまさにその一貫として内外から注目されているものだ。

ところが、「共謀罪法案」の対象から、贈賄罪だけではなく外国公務員贈賄罪も消えている―。このことが分かれば更なる国際的批判は免れない。しかも、2020年春には、各国から法務大臣や検事総長クラスが集結する、5年に1度の刑事司法の一大イベント「コングレス」(国連犯罪防止・刑事司法会議)が待っている。1970年の京都会議以来50年ぶりに日本で開催される晴れの舞台だ。

「共謀罪」から贈賄罪や外国公務員贈賄罪が外されていることを知ったら、世界中から来る数千人の司法関係者は愕然とするだろう。

そうした背景事情を考えると、今回、「共謀罪法案」に「贈賄罪の国外犯」の導入が盛り込まれたのは、贈賄罪および外国公務員贈賄罪が「共謀罪」の対象リストから消されたことのいわば「埋め合わせ」という側面も持つと考えられるが、いかがだろうか。

問題は、具体的にどのような罪を「共謀罪」の対象とし、どのような犯罪を対象から外したかという事に関して、多くの国民が不安感を抱いていることだ。政府はより丁寧に、ブラックボックスの中身を説明する必要がある。贈賄罪だけの問題ではないだろう。この点に関して、参議院での充実した審議が望まれる。